ストレングスコーチの知識茂雄です。
実行力の資質である「アレンジ」について解説していきます。
根源的な欲求、動機づけ
「アレンジ」を上位に持つ人の根源にあるのは、様々な要素をうまく組み合わせて、無駄なく成果を出したいという欲求です。
原語はArranger。ギャラップの解説では「指揮者」や「ジャグラー」と表現されています。実行力の資質は、成果を出すことを大切にしています。無意識なので、自然とそうなってしまうのです。そして、実行力の資質同士の違いは、その成果の出し方や方向性にあります。「アレンジ」の場合は「無駄なく」が一つのキーワードです。何事も、無駄なく成果を出すということを大事にしている。言い換えると、無駄が嫌いなのです。
そのために「アレンジ」を上位に持つ人がやっているのが、「組み合わせる」ことです。人、モノ、お金、情報、時間といった、自分の使えるリソースをうまく組み合わせて成果を出す。対象が人であれば適材適所の人材配置、時間であれば複数のことを同時並行で進めること。自分で動かせるリソースがあればあるほど、やる気が出ます。この「組み合わせて、無駄なく成果を出したい」という欲求こそが、「アレンジ」という資質の核心です。
振る舞いの特徴
無駄なく成果を出したい欲求は、まず「事前の段取り」という形で表れます。
「アレンジ」を上位に持つ人は、何をやるにしても事前の段取りを大事にします。何をどういう順番でやっていけば無駄なく作業できるかをイメージしてから、あるいは必要な準備をしてから取り掛かる感じです。料理で言えば、必要な器具や材料を揃えてから始めるようなイメージです。必要になるたびに冷蔵庫を開けて取り出すことを、無駄に感じるからです。
旅行の段取りもいい例です。目的地までどんな交通機関をどんな順番で使えば最短で到着できるか、観光地をどんな順番で回れば無駄がないかを考え、ばっちりな旅行プランを立てます。何を、どういう順番で実行すれば無駄なく成果が出せるかを、一瞬でイメージできるのです。常にそれを考えているので、無意識でもぱぱっとイメージできてしまいます。
次に、「複数のことを同時並行で進める」という形で表れます。「アレンジ」を上位に持つ人の感覚は、「組み合わせる」とか、ぴったり「はめ込む」というところにあります。複数の案件を抱えているときは、それぞれを細かな作業に分解し、分割された作業を自分の使える時間の枠にぱちぱちとはめ込む感覚で割り当てていきます。そうやって自分の使える時間を隙間なく埋め、複数の案件を少しずつ進めていくことで、同時並行を実現しています。
何もしない無駄な時間を作らない。鍋で煮込んでいる間に使った器具を洗ったり、次にやることの準備をしておいたりする感じです。誰でもある程度はやっていることですが、「アレンジ」の場合は隙間なくぴったりはめ込む感覚なので、隙間時間を何にどう使うと最も無駄がなくなるかの感覚が鋭いのです。
この組み合わせを最適化する才能は、空間にも作用します。家具や家電がすっきり収まるように部屋の配置を考える。旅の荷物をスーツケースにすっきり収める。雑多な品物を隙間なく段ボールに詰め込む。これも才能です。
そして、「采配する」という形で表れます。無駄なく成果を出すことを考えたとき、自分にとって苦手なことを自分で頑張ってやるよりは、それを得意とする人がいるならその人に任せた方がいい、という考え方になります。ここでも「はめ込む」に近い感覚として「当てはめる」が出てきます。つまり、適材適所に人を置いて采配することが得意なのです。人の強みを見抜く「最上志向」や、人それぞれの個性を見抜く「個別化」が合わせて上位だと、その感覚はより強くなります。
強みとして活かせている状態
この欲求が強みとして機能しているとき、「アレンジ」を上位に持つ人は、全体を見ながら采配し、最短で成果を出す人になります。
人、モノ、お金、情報、時間などのリソースを自分の思うままに組み合わせ、全体を指揮するときに、その真価を発揮します。プロジェクトの指揮者として、その力を発揮できるのです。全体を把握しつつ、最適にリソースを配分して采配する。プロジェクトの責任者のような立場に立つと、常に全体の動きを見ながら手を打っている感覚があります。「ここがこう変わるなら全体にこう影響があるから、こう対処しよう」ということを、無意識に考えているのです。
「アレンジ」は、変化を進化ととらえます。今よりもっと無駄をなくせると思えば、何かを変えることをためらいません。場面場面での最適解が異なる以上、環境や状況に合わせて変えていくのが当たり前だと考えるのです。時間軸で言えば「今」を大切にし、今この瞬間に対応し、必要に応じて何かを組み替えて対応していきます。
世の中は様々な要素が組み合わさり、常に変化していくもの。その環境の変化に何事もなかったように軽やかに追随していく柔軟さが、周りの人には頼もしい存在として映っています。「アレンジ」を上位に持つ人の存在が、無駄を省き、最短で成果を出すことを可能にするのです。
妨げになってしまっている状態
同じ欲求が裏目に出ると、まず「変えたくなる」ことが、変えることに抵抗のある人とのすれ違いを生みます。
「アレンジ」という資質は、表立って大きく悪さをすることはあまりないように思います。強いて挙げるとしたら、最適な手順、最適な組み合わせで無駄をなくしたいという欲求から、いろいろ変えたくなることでしょうか。仕事において、今やっている手順をこう変えたらもっと無駄をなくせる、ということを常に考えていて、実行力の資質だけに、実際に変えようとします。
それが自分だけに影響のある範囲ならまったく問題ありませんが、そうでない場合も当然あります。そういうとき、たとえば「規律性」を上位に持つ人は、自分なりのルーティンを大切にしているので、いきなり変えることに抵抗を持つかもしれません。「慎重さ」を上位に持つ人は、変えることで生じるリスクを想定するので、なおのことです。
変えることが悪いわけではありません。ただ、「アレンジ」を上位に持つ人にとって変えることが当たり前だとしても、周りの人が誰しもそう思っているとは限らないということです。だから、何かを変えたくなったら、それに抵抗感を持つ人がいるかもしれないと念頭に置いて確認しながら、変更までの準備期間を置いた上で実行していくといいと思います。
自分がなぜ変えようとしているのか、何をどう変えようとしているのかを、十分前もって説明することも大事です。自分から見たら明らかに無駄が減ると思えても、他の人にはそう感じられないこともあります。もっと言えば、実際には多くの人に影響を与えてまで変更するほどの良さがないことだってあるかもしれません。
もう一つは、人をコマのように扱ってしまいかねないことです。特に人事権のある管理職の方が気をつけた方がいいのは、人材配置を変えたくなる場合です。誰にどんな役割を担わせるとより無駄がないかを考えがちで、人間関係構築力の資質があまり上位にない人だと、極論すると人をコマのように扱ってしまいかねません。
そういった変更が本人の望むものではない場合、やる気という要素がその人の働きを落とすことにつながるかもしれませんし、自分が見ているその人の可能性はごくごく一部でしかないかもしれません。大事なのは、何かを変えたくなったとき、そこに関わる人としっかり対話していくことです。自分も周りの人も皆が快適に思えるような形で、無駄をなくしていけばいいのです。
旅行の例で言えば、できるだけ多くの場所を無駄なく回りたくなると思います。「達成欲」が加わるとさらにその傾向が強くなります。でも、人によっては、たくさんの場所を巡るよりも一か所をゆっくり味わいたい人もいます。どんな資質でもそうですが、自分の当たり前と他人の当たり前は違うということを知っておくことが、何より大切です。
効果的に活かす方法
「アレンジ」を効果的に活かす鍵は、自分の使えるリソースを把握することと、任せてもらえる環境を整えることです。
まず、自分がどんな使えるリソースを持っているのかに目を向けることです。「アレンジ」は基本的に、与えられたリソースを最適に組み合わせることを考えます。それでも、リソースの量と質は成果に反映されるわけなので、自分が十分な量と質のリソースを持っているかに意識を向けることが、「組み合わせ」という観点では大事になってきます。良い指揮者でいるためには、一人ひとりがどんな演奏をするのかを把握しておく必要があります。自分が采配できるリソースを把握しておくということです。
「収集心」を併せ持っていれば自ら情報を集めますし、「個別化」を併せ持っていれば人というリソースに目を向け、それぞれの人の特徴を活かした適材適所のチーム作りが得意です。逆に言えば、自分がそういう資質を持っていないなら、それらを持つ人を頼ればいい。自分がチームを率いることになったとき、「個別化」を上位に持つ人に、その人がとらえているメンバーそれぞれの特徴や強みを教えてもらう、というように。
そして、刻々と変わる状況をその時々で把握すること。自分に情報を与えてくれる人を確保しておくことです。周りに「アレンジ」を上位に持つ人がいたら、知り得る情報をすべて渡してあげてください。その情報を元に、きちんと成果を出してくれるはずです。
次に、任せてもらえる環境です。「アレンジ」は、人に任せて自分は采配を振るう方に回ることの方が、基本的には得意です。だから可能であれば、十分なリソースを与えられる前提で、プロジェクト丸ごとの采配を任せてもらえる環境を整える方がいい。加えて、より無駄なく成果を出すために計画や手順、仕組みを随時変更できる自由を与えられると、なおいいです。任せてもらえると、生き生きとその役割を担ってくれると思います。
そして、協業での注意点です。特に実行力の資質が上位に並ぶ中での「アレンジ」は成果に強くこだわるので、まだ未熟な人ばかりを割り当てられると意欲を失う可能性があります。「最上志向」を併せ持っているとその傾向はとても強く出ます。
そういう人の場合は、「個別化」や、人の成長を支援する「成長促進」、どんな人にも居場所を与える「包含」など、人間関係構築力の資質を上位に持つ人がメンバーにいてくれると安心です。これは、「アレンジ」を上位に持つ人が意識するといいことであると同時に、その人にどういう環境を与えればより生き生きと働けるか、ということでもあります。
対比される資質
「規律性」と「アレンジ」は、変えることとの付き合い方が対照的です。「アレンジ」を上位に持つ人は、無駄をなくしたいという欲求から、今よりもっと良いやり方が見つかれば手順ややり方を変えることにためらいがありません。「規律性」を上位に持つ人は、何事も秩序立った、予測の立つ状態にしておきたいという欲求から、一度決めた手順やルーティンに忠実に動くことを好み、いきなり変わることに抵抗があります。
この違いは、相互理解がないとすれ違いを生みます。「アレンジ」から見れば「規律性」は融通が利かないように見え、「規律性」から見れば「アレンジ」はころころ変えて落ち着かないように見える。しかし、状況に合わせて組み替えていく人と、決めたことを確実に繰り返す人は、どちらも組織に欠かせません。「アレンジ」を上位に持つ人が何かを変えたいときは、なぜ変えるのかを前もって伝え、準備期間を置くことで、この二つは補い合えます。
他の資質との組み合わせ
「アレンジ」と「最上志向」が組み合わさると、究極の段取り上手になります。「最上志向」には、優れたものをさらに引き上げたい、無駄なく最高の成果を出したいという欲求があります。「アレンジ」の無駄をなくす感覚に「最上志向」のより良くしたい欲求が重なるので、常に手順を見直して改善していく、分刻みで計算されたきめ細かな段取りができあがります。
「アレンジ」と「適応性」が組み合わさると、臨機応変さが際立つ人になります。「適応性」には、今この瞬間に起こることを受け入れて対応したいという欲求があります。どちらも「今」に対応していく資質なので、不測の事態が起こっても、その都度何かを組み替えて柔軟に対応していけます。文字通り、今を生きている感じです。
「アレンジ」と「個別化」が組み合わさると、適材適所の人材配置に長けた人になります。「個別化」には、人それぞれの違いを見抜き、それぞれに合った関わり方をしたいという欲求があります。人というリソースの一人ひとりの特徴を見極めた上で組み合わせるので、それぞれが自分の得意なことを活かせるチームを作れます。
「アレンジ」と「達成欲」が組み合わさると、無駄なく生産性高く、成果を出す速さが半端ではない人になります。「達成欲」には、取り掛かって終わらせたい、同じ時間でより多くのことを成し遂げたいという欲求があります。量をこなす力に無駄のない段取りが加わるので、同時並行で数多くの成果を上げられるのです。
このように、「アレンジ」は組み合わさる資質によって表れ方を変えていきます。一緒に上位にある資質によって、組み合わせる対象が人なのか、情報や知識なのかも変わってきます。ただ、根っこは一つです。様々な要素をうまく組み合わせて、無駄なく成果を出したい。自分がどんな使えるリソースを持っているのかに目を向けることで、この資質はより活かされるのです。
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上記はギャラップに承認されたものではなく、ギャラップの認可も推薦も受けていません。クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)に関する意見、見解、解釈は、株式会社ハート・ラボ・ジャパン代表 知識茂雄だけの考えです。



