たとえば、部下に出した指示を間違え、内容は訂正したものの、自分のミスだと認めて謝る一言が出てこない。部下のほうも、次に上司の間違いに気づいたとき、言い出してよいか迷うかもしれない。
素直に謝るには、自分の誤りを認めることと、自分の価値が下がることを結びつけないことが大切だと、私は思っています。私にも、謝れずにごまかすときと、必要以上に謝り続けるときがあります。どちらにも、人からどう見えるかを気にする自分がいました。
ミスを認めると、自分の価値が下がるのか
会社員の頃、自分のミスをそそくさと後始末して、何事もなかったかのように振る舞ったことがありました。
ちゃんと誠実にやっているつもりだから、自分のミスや過ちを認めると、自分の価値が下がると思い込んでしまう。変なプライドが邪魔をして、「ごめんなさい」が口から出てこないのです。
振り返ると、ミスをしない人に見られたかったのだと思います。ばれずに済んでも、後ろめたさは残りました。上司という立場なら、間違いを認めたら頼りない人だと思われる、という心配も加わるかもしれません。
謝りすぎるときも、人の目が気になる
反対に、私は過度に自分を責めて、謝り倒してしまうときもあります。自分の非を必要以上に重く受け止め、嫌われたくない、人からどう見えるかが気になってしまう。自分を責めることで、許されたいのだと思います。
人によく見られることにこだわるうちに、自分を大切に扱うことからは遠ざかっていたのだと思います。
素直に謝ることを、自分との約束にする
自分を大切に扱うことと、謝ることが、どうつながるのか。私は、素直に謝ることを、自分との約束として考えています。
福島で参加した自己基盤強化合宿では、「基準を引き上げる」がテーマでした。自分で自分を、大切で価値ある存在だと認められるような行動や態度をとる。それを自分と約束することだと理解しています。
私にとって、「ありがとう」と「ごめんなさい」をタイミングよく伝えることも、その約束の1つです。自分が間違えたときに素直に謝れるほうが、自分で自分を見たときに、かっこいいと思うのです。私自身、まだ当たり前のことを当たり前にできる自分を目指しています。
指示を間違えた上司は、何から始めるか
冒頭の、部下に出した指示を間違えた場面で考えてみます。
自分の誤りに気づいても謝れずにいるなら、謝ることで相手からどう見られるかを心配していないか、考えてみてください。指示を間違えたという事実に、頼りない上司だと思われる、という心配を重ねていないでしょうか。
指示のどこを間違えたのかは、具体的に確かめられます。一方、頼りない上司だと思われるというのは、相手の評価を自分が予想したものです。確かめられる誤りと自分の予想を分けたうえで、自分に誤りがあったことを認め、相手に謝ってみてください。
たとえば、伝えた期限が誤っていたなら、自分が間違えたことを認めて謝り、正しい期限を伝え直します。部下がすでに進めた作業に影響がないかも確かめます。
何度も謝りたくなるときは、自分の非を認めて謝ることに加えて、許してもらえたという安心まで求めていないか、振り返ってみてください。謝ったあとは、伝え直した期限で対応できるかを部下に聞くなど、仕事の話に戻ります。
上司が自分の誤りを認めて謝れるかどうかは、部下が気づいたことを言い出せるかどうかにも関わると思います。アサーティブ・コミュニケーション研修では、上司もメンバーも一人ひとりが自分の伝え方のくせを知り、言いにくいことを、相手も自分も大切にしながら伝える練習を、自分の実例で行います。職場に、言うべきことを言い合える関係をつくるための研修です。人数や時期が決まっていなくても、ご相談いただけます。
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