ストレングスコーチの知識茂雄です。
戦略的思考力の資質である「学習欲」について解説していきます。
根源的な欲求、動機づけ
「学習欲」を上位に持つ人の根源にあるのは、知らなかったことが「知っている」状態になっていく、その過程を楽しみたいという欲求です。
原語はLearner。文字通り「学ぶ人」です。単純に言えば、学ぶのが好きな、学びを心から楽しむ資質で、知的好奇心に突き動かされて、何に対しても「学びたい」という意欲があります。ここで大事なのは、「学習欲」を上位に持つ人にとって、学びとはそれ自体が目的そのものだということです。多くの人は何かを成し遂げるための手段として学びを得ようとしますが、「学習欲」を上位に持つ人は違います。学ぶことは、目的そのもの。これこそが「学習欲」の「欲」を表していると思います。
知的好奇心という意味で共通点のある「収集心」と区別しづらいところがありますが、「収集心」は自分の知らないことがあると何でも情報として集めておきたい資質で、情報や知識を断片として収集するイメージです。一方「学習欲」は、自分の知らなかったことが少しずつわかっていく、その感覚を楽しみます。「知らない」から「知っている」に変わっていく階段状の過程そのものを楽しむのです。
本を読むという行為にしても、「収集心」ではそこにある必要な情報を取得するためであり、「学習欲」では本を読むことでそこに書いてある知識が自分の中に段階的に溜まっていく感覚を楽しむ、という違いです。この「学びの過程を楽しみたい」という欲求こそが、「学習欲」という資質の核心です。
振る舞いの特徴
学びの過程を楽しみたい欲求は、まず「学びの場に出かける」という形で表れます。
「学習欲」を上位に持つ人は、興味を惹かれた何かについて、関連する本を読んでみたり、講座やセミナーに出かけていったりして、その知識を習得するために学びます。学びの「場」が大好きで、たとえ人見知りでも、学びが目的であれば出かけられます。「収集心」も併せて上位にあると「幅広いことに興味を持つ」が加速されて、興味を持ったら何でもかんでも「学びたい」になります。実際、両方が上位にある人はかなり多いです。
「学習欲」と「収集心」を上位に持つ人は、とにかく何でも知りたいので質問上手な面もあります。子どもの頃は質問魔だったかもしれませんね。
次に、「資格が増える」という形で表れます。「学習欲」を上位に持つ人は資格コレクターになりがちですが、資格を取得することそのものよりも、そこに至るまでの過程が大事なのです。資格とは「学んだ証」。必ずしも取得した資格をその先で活かす目的があるわけではなく、学ぶという目的で取り組んだ結果として資格を得ている、という感じです。学びをあくまで手段として考える人たちからすると、この感覚は理解しがたいかもしれません。
そして、「新しい経験に飛び込む」という形で表れます。「学習欲」の学びは、机上の知識を詰め込むだけではありません。何かを経験して身につけていくことも、学びの過程に入ります。自転車を練習して乗れるようになっていく過程を楽しむ、という感覚です。緊張してハンドルを握る手に力が入りすぎるとバランスが取れないから、いかに力を抜くかが大事なんだ、というような発見は、何かしら新たなことを経験してみないと得られません。
だから「学習欲」を上位に持つ人は、新しいことに挑戦することに抵抗がありません。むしろ新たな経験を新たな学びの機会ととらえ、積極的に挑戦します。「ポジティブ」も併せ持っていると、逆境の中にあってもそれを学びの機会ととらえて前向きに向き合えます。
興味関心の向く方向は、併せ持つ資質で少し変わります。「原点思考」なら歴史や史実、「個別化」なら人の違いを知る心理学や心理系の診断、「着想」ならとにかく「面白い」もの。「最上志向」を併せ持っていると、普通の学びには満足しないので、最高の環境やその道の一流の講師にこだわりが出やすいと思います。
強みとして活かせている状態
この欲求が強みとして機能しているとき、「学習欲」を上位に持つ人は、世の中にあふれる知識、情報、知恵の価値を知り、活用できる人になります。
机上の学びに留まらず、すべての経験を学びととらえるので、失敗からも数多くのことを学び取ります。経験すること、したことには一切の無駄はないととらえるその姿勢が、新たな挑戦をためらっている人の背中を押します。環境や状況の変化で職場や所属する集まりに大きな変革が必要なとき、「ここから何が学べるだろう」と、ある種のわくわく感もありながら前向きに進んでいく。
そういう変化に対する開かれた姿勢が、周りの人にも良い影響を与えます。「学習欲」は「学び」をきっかけにして「行動する」資質でもあります。学びにつながることであれば動けるので、戦略的思考力の資質でありながら、実行力、人間関係構築力、そして影響力の側面をも持っていると言ってもいいかもしれません。とにかく使いでがあり、使い勝手のいい資質です。
そして、どれだけ学んでもまだまだ学ぶことがあると思っているので、ある意味「謙虚さ」を失わない人でもあります。どんな人に対してもその人から学ぶことがあると思えるその対等な姿勢は、ある種の人間関係構築力としても働きます。自分の好奇心を目の前の相手に向け、学ばせてほしいという姿勢で質問していくと、相手から見たら自分に対して対等に、興味を持って接してくれていると感じる。人は、純粋に自分に興味を持ってくれる人には親しみを感じるものです。
「学習欲」は、人を学び、人からも学ぶ。人間関係構築力の代わりとしても使えるのです。学びの場には多くの知らない人がいるので、学びの場にいるだけで勝手に多くの人とつながっていくことにもなります。私自身は「社交性」が29番目で絶望的な位置ですが、「学習欲」に突き動かされていろんな学びの場に出かけることで、結果的に多くの人と出会いつながっています。私にとって「学習欲」は、「社交性」の代わりでもあるのです。
妨げになってしまっている状態
同じ欲求が裏目に出ると、まず学ぶこと自体が目的になって、時間とお金を注ぎ込んでしまいます。
「学習欲」はつぶしが利くし、あまり悪さをしない資質だと個人的には思っています。強いて挙げると、やみくもに「学び」に自分の時間やお金を注ぎ込んでしまいかねないところです。「目標志向」などが併せて上位にない限りは、学ぶ上での目的を持たないことが多く、学ぶこと自体が目的化してしまう。
会社の補助を使って、自分の業務とはまったく関係のないものをただ学びたいという理由だけで片っ端から申請して学ぶとか、「その資格を取って何するの?」と言われるような資格を持っているとか。特に「着想」や「収集心」を併せ持っていると、いろんなことに興味関心が向いてしまうのでそうなりがちです。
もちろん、どんな学びでも、どんな資格でも、何らかの形で自分の身になることは間違いありません。学んでいる時点で目的が明確でなくとも、後追いで役立っている感が出てくることもあります。だから、何かを学ぶことで誰かに迷惑を掛けたり、いたずらに時間とお金を浪費したりしない限りは、存分に学べばいいと思います。目的なく学んでしまう自分の傾向を理解した上で、必要に応じて学びの目的を明確にする。
あるいは、自分が学ぶ「過程」に重きを置いていることを自覚できれば、それを踏まえてより直接的に将来につながるような学びを選ぶこともできます。際限なく学んでしまう自分に「なんだかなあ」と思うことも多いかもしれませんが、振り返ってみてください。学んだことが結果的に役に立ったことが、そこかしこであったはずです。
もう一つは、インプットに偏ることです。これは戦略的思考力の資質全般に言えることですが、生まれつきの傾向としてアウトプットに意識が向きづらいのです。目的を持たないという特徴に起因して、無意識でいるとアウトプットする方向には行きません。「最上志向」を併せ持っていると、いつまで経っても「まだまだ」と思ってしまいます。
だから、どれだけ学んでも現状に満足感がなく、次への一歩をなかなか踏み出せなかったり、せっかく学んだことを周りの人に教えることをなかなかしなかったりします。それはいかにももったいない。そういう人は、時々後ろを振り返り、自分がどれだけの学びを積み上げてきたかを確認してみるといいと思います。
そして、学びが足りないと元気が出ないことです。「学習欲」は学び続けてなんぼです。忙しすぎて新しいことを学ぶ機会があまりに少ないと、やる気が上がらないことも。何となくもやもや感があってストレスを感じるときは、学びが足りていないのかもしれません。「学習欲」にとって学びは心のガソリンです。まったく何の変化もない環境に居続けると栄養不足になってしまうので、「学び」という栄養を与え続けることを意識しましょう。
効果的に活かす方法
「学習欲」を効果的に活かす鍵は、アウトプットと、継続的に学べる場に身を置くことです。
まず、アウトプットを意識することです。アウトプットに意識を向けることで、直接的に他者貢献となって資質を生産的に活かすことになります。また、アウトプットしてみることで自分の理解の浅いところ、知識の不足しているところにも気づけるので、さらなる学びへの意欲が湧きます。アウトプットがさらなるインプットを誘発して、いい循環が回り始めるのです。一対一でも勉強会でもいいので、何かしらアウトプットできる場を「意識的に」作りましょう。
社内の勉強会や、ブログなど自分の媒体での発信でもいい。個人的には、何かしら「教える」という姿勢でのアウトプットが最も効果的だと感じています。教えるとなると、自分が学び得たものを今一度しっかり理解しようという意識につながりますし、教えるという経験自体が「学習欲」を喜ばせることにもなり、足りないものにもより気づきやすくなります。
「学習欲」を上位に持つ人は、自分が思う以上に、他の人の役に立つ情報や知識を積み上げているものです。学びがいかに人生を豊かにしてくれるかを含めて、自分の学びを積極的にアウトプットしていきましょう。
次に、継続的な学びの場に身を置くことです。「学習欲」を上位に持つ人は、常に新たな知識が身につけられる、あるいは何かしら新たな経験が得られる場を求めます。たとえば、期間が限定されていて、どこかで終わりが来て次に切り替わっていくプロジェクト単位で仕事が進んでいく環境です。プロジェクトが切り替われば新たに習得すべきことが出てきますし、新たなメンバーと関係を築いていく過程すら学びにつなげられます。
そういう環境に身を置くことが、自分を活き活きとさせます。仕事面では新しいプロジェクトに自ら飛び込んでみたり、私生活では行ったことのない場所に旅行に行ったりすることも、「学習欲」を満たす方法です。
そして、「緩衝材」として使うことです。資質には、物事を前に進ませる推進力となるものと、ある種の緩衝材のような働きをするものがあると、私は個人的に思っています。「学習欲」はどちらの面もありますが、多くの人があまり意識していないのは後者です。「学習欲」は、極論するとすべてを「学び」として受け取ることができます。うまくいかないことがあっても「うまくいかないことも一つの経験だ」と思える。人間関係にしてもそうです。
私は「社交性」が低く「調和性」「内省」が高いので、あまり話したことのない人と話すのがとても居心地の悪い感覚がありますが、その気持ち悪さすら学びとしてとらえています。「学習欲」を上位に持つ人に効果的な問いは、「今この瞬間に何を学んでいるのだろう?」というものです。どんなに辛い状況にあっても、それを学びとしてとらえていけば状況を受け入れやすくなり、一旦受け入れられさえすれば、そこから先をどう対処するかに思考を移せます。
「慎重さ」を上位に持つ人であっても、「ここから何が学べるだろう?」と知的好奇心に焦点を当てれば、新しいことに挑戦する抵抗感が薄れると思います。
対比される資質
「収集心」と「学習欲」は、知的好奇心という共通点がありながら、楽しんでいるものが違います。「学習欲」を上位に持つ人は、学びの過程そのものを楽しみます。新しい知識やスキルを学ぶ過程に喜びを見出し、その結果として成長を感じる。机上の学びだけでなく、新しいことを経験することにも喜びがあります。
「収集心」を上位に持つ人は、知らないことを知り、情報や物を集めておきたいという欲求から、情報やデータを集めること自体に喜びを感じます。いつか役に立つかもしれないと考えて蓄えておくことが多く、集めた情報そのものが価値なのです。
流れとして考えると、まず「収集心」が働いて何かについて調べて情報を集め、その中の特定の何かにさらに興味を惹かれ、本を読んだり講座に出かけたりしてその知識を習得するために学ぶのが「学習欲」です。両方上位の人にとっては、この感覚の違いは理解しづらいかもしれません。
この違いは、相互理解がないとすれ違いを生みます。「学習欲」から見れば「収集心」は集めるだけで身につけていないように見え、「収集心」から見れば「学習欲」は一つのことに時間を掛けすぎているように見える。しかし、広く集める人と、深く身につけていく人は、どちらも組織に欠かせません。
他の資質との組み合わせ
「学習欲」と「収集心」が組み合わさると、興味を持ったら何でも学びたい人になります。「収集心」には、知らないことを知り、情報や物を集めておきたいという欲求があります。集めた情報の中で興味を惹かれたものをさらに深く学んでいくので、広い情報と深い知識の両方を持つ専門家になる可能性を秘めています。両方が上位にある人はかなり多く、資格コレクターと呼ばれる人が多いのもこの組み合わせです。
「学習欲」と「目標志向」が組み合わさると、何を何のために学ぶかが明確な人になります。「目標志向」には、明確な目標を定め、そこに絞って集中し、達成したいという欲求があります。単体では「学んでどうする」という目的を持たない「学習欲」でも、「今やるべきことを絞りたい」「何のために、を明確にしたい」という欲求が加わるので、学びが目標達成に直結していきます。
「学習欲」と「最上志向」が組み合わさると、最高の環境で学び続ける人になります。「最上志向」には、優れたものをさらに引き上げたいという欲求があります。普通の学びには満足せず、最高の教材やその道の一流の講師にこだわり、自分を高め続けます。一方で「まだまだ」と思い続けて満足感を得にくい組み合わせでもあるので、時々振り返って積み上げを確かめるといいでしょう。
「学習欲」と「ポジティブ」が組み合わさると、逆境の中でも学びを見出して前向きに進む人になります。「ポジティブ」には、自分も周りもポジティブな感情でいたいという欲求があります。うまくいかなかった経験も「これでまた一つ学べた」ととらえて次に活かし、新しい環境にもためらいなく飛び込んでいけます。
このように、「学習欲」は組み合わさる資質によって表れ方を変えていきます。ただ、根っこは一つです。知らなかったことが知っている状態になっていく、その過程を楽しみたい。「学習欲」にとって、知らないことがあるのは喜びです。この世は、まだまだ知らないこと、経験したことのないことで満ちあふれている。山谷いろいろあるけれど、人生は学びの宝庫。「人生のすべては学びのためにある」というのも、あながち大げさではないかもしれません。
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