ストレングスコーチの知識茂雄です。
戦略的思考力の資質である「収集心」について解説していきます。
根源的な欲求、動機づけ
「収集心」を上位に持つ人の根源にあるのは、知らないことを知りたい、情報や物を集めて蓄えておきたいという欲求です。
原語はInput。文字通り、新たな情報や知識をどんどん取り込んでいく感じです。「収集心」を上位に持つ人を一言で言えば「知りたい人」です。興味関心は幅広く、極論すれば、自分の知らなかったことに出くわすと、それをそのまま放置することができません。私自身も「収集心」を上位に持っていますが、たとえばコロナウイルスという言葉が最初に出てきたときに、速攻でそのことについて検索して調べました。そうやって調べて情報を集め、「知れた」という感覚で十分なのです。
動機づけは単に知りたいということだけなので、それを知ることで何をどうするというのは、基本的にはありません。「情報を集めて蓄えておけば、いつか何かしら役に立つだろう」という感覚で、幅広く情報を集める。だから、集めた情報を蓄えておくのも特徴で、一旦集めた情報を捨てるのが忍びなく感じると言った方がわかりやすいかもしれません。この「知りたい、集めて蓄えておきたい」という欲求こそが、「収集心」という資質の核心です。
振る舞いの特徴
知りたい欲求は、まず「知らないことがあるとすぐ調べる」という形で表れます。
「収集心」を上位に持つ人は、自分の知らないこと、わからないことがあると、すぐにネット検索などで調べます。知らないことをそのままにしてはおけないのです。今は情報を集めると言えばネットが主なので、検索が得意な人も多いと思います。というか、本人はきっと得意とも思っておらず、当たり前にやっていることだと思います。
常に情報を集めることが当たり前になっているがゆえに、どんなキーワードを組み合わせれば欲しい情報が得られるかが、直感的にわかるのです。人からいろいろと教えてほしいと聞かれることも多く、その際「そんなの検索すれば一発で出てくるでしょ」と思うかもしれません。でも、「収集心」を上位に持たない人にとっては必ずしもそうではなく、自分で調べるくらいなら人に聞いた方が早いと思う人がたくさんいることを、知っておきましょう。
次に、「蓄える」という形で表れます。集めた情報を「いつか使うかも」「いつか役に立つかも」という感覚で蓄えておきます。仕事関係のメールをほとんど削除せずに保存していたり、講座やセミナーでもらった資料を保管していたり。ただし、集めた情報を整理整頓して保管しておけるかは、残念ながら他の資質に依存します。「規律性」を併せ持っていればきっちりできると思いますが、私自身は典型的にそれが苦手です。
それでも「収集心」は、常に無意識レベルで情報を探して取得しているので、探すのが得意な資質でもあります。保管してさえいれば、探せば見つかるという感覚は持っていると思います。
そして、「全体像を把握しておきたい」という形で表れます。常に情報を集めて全体像を把握しておきたいので、メールでもCCが欲しい。その裏返しで、誰かのメールに返信するとき、関係する人に知っておいてもらおうとCCを入れがちです。相手が「慎重さ」を上位に持つ人だと、何でもオープンにすることを好まないこともあるので注意しましょう。何かの目的を持って発動されることももちろんあります。
家電などの買い物をする際に、まず比較サイトで各メーカーの製品情報を集めて比較検討した上で購入する、というように。「慎重さ」を併せ持っていると、購入した後で後悔したくないので、より慎重に集めて検討することになります。「着想」を併せ持っていると「面白い」ものに惹かれるので、検索している途中で面白い情報に出会うとそれについてさらに集め始めます。気がつくと時間を忘れてあちこちのサイトをさまよっている、ということもあると思います。
強みとして活かせている状態
この欲求が強みとして機能しているとき、「収集心」を上位に持つ人は、周りの人の役に立つ情報を幅広く集めて提供する、情報を集める達人になります。
自分の知らないことがあると調べずにはいられないので、頭の中には、周りの人が「なんでそんなことまで知ってるの?」と言うくらいの多彩な情報が詰まっています。どこからどう情報を引き出せば欲しい情報が得られるかがわかっていて、自分ではいとも簡単に情報を見つけ出してしまうので、そうできない人を見て不思議に思うかもしれません。でも、それ自体が才能なのです。
自分の当たり前が才能なのだと気づけると、検索すれば3秒でわかることをいちいち尋ねてくる人にいらいらしなくなりますし、そういう人に情報を提供することが自分の「収集心」を活かした他者貢献になります。自分がすでに持っている情報を差し出すだけでなく、他者の代わりになって探してあげるのも、貢献のあり方です。
そして、「いつか役に立つかも」と考えて捨てずに手元に置いていた情報が実際に役に立ったとき、無上の喜びを感じます。何か新しいことに取り組むときには、まず情報収集から始めることが多く、関連する資料やデータを集めた上で準備を整えるので、議論の質を高めたり、より効果的な提案をしたりできます。卓越した情報収集の力で、周りの人の役に立つ情報を幅広く集めて提供し、貢献できる。それが「収集心」という資質です。
妨げになってしまっている状態
同じ欲求が裏目に出ると、まず情報が過多になります。
「収集心」を上位に持つ人は、何かをやる上で情報を欲します。すると当然、それは質問という形で誰かに投げかけられることが多くなります。「知りたい」が前面に出すぎると、その情報が要るのか要らないのかによらず「とにかく知っておきたい」になりがちです。
一つのことを知ると、そこから派生してさらに知りたくなるので、知りたいことがどんどん増えていく。特にリーダーや管理職の役割を担う人は気をつけた方がよく、部下やメンバーに任せた仕事に対して事細かに確認したくなり、それが細かすぎる管理だと受け取られかねません。
その逆方向にも気をつけた方がいいかもしれません。自分が情報を必要とする人なだけに、他者に対しても過度に情報を与えすぎてしまうことです。使うか使わないかは置いておいて、とりあえず情報は持っておきたい感覚なので、相手もそうだろうと思ってしまう。
でも人によっては、情報が多ければ多いほどそれがノイズとなり判断に迷うので、必要最低限に絞ってほしい人もいます。この種の情報過多で大きく困ることが起こるとは思いませんが、少なくとも自分の特徴として自覚しておいた方がいいと思います。
もう一つは、捨てられないことです。「いつか使うかも」「いつか役立つかも」の感覚が、集めた情報や物をなかなか捨てられなくさせます。講座やセミナーでもらった資料を、ほとんどの場合二度と見返すことはないのに、捨てるのが忍びないと思ってしまう。保管すること自体が問題でなければ何も考える必要はありません。でも、無駄に溜めているなと思うのであれば、曜日を決めて整理整頓するとか、定期的に処分する日を設けるとか、強制力を働かせることがあってもいいと思います。
その際のコツは、一つひとつを吟味しないこと。吟味してしまうと「やっぱりいつか必要になるかも」と引きずられやすくなります。集めた情報の整理についても、あまり面倒なことをやろうとしてもきっと続きません。ざっくりフォルダを分けて検索で引っ掛けるなど、「これだったらできそう」という範囲で、取り出しやすくする工夫をするのがコツです。
そして、インプット過多になることです。「収集心」を上位に持つ人は、情報を集めることそのものが目的化しやすく、インプットに偏りがちです。自分の知らないことがあると自分で調べるのが当たり前になりすぎていて、自分が溜め込んだ情報や知識が他の人の役に立つという感覚が薄いかもしれません。「そんなの調べればすぐわかるじゃん」という感覚があるからです。だから、たくさんの情報や知識を頭の中に抱えていながら、それをアウトプットすることに意識が向きづらいのです。
自分が持っている「調べれば簡単に出てくる」は、自分がそうだというだけで、他の人もそうだとは限りません。ここに気づければ、自分の頭の中に詰まっている種々多様な情報が、いかに貴重なものなのかがわかるでしょう。
効果的に活かす方法
「収集心」を効果的に活かす鍵は、誰がどんな情報を必要としているかに意識を向け、アウトプットすることです。
まず、アウトプットすることで空いた場所にさらにインプットしていく、そんな循環を回すことです。自分が持つ情報を役立ててくれる人が誰で、その人たちにどのように、どんな場で情報を提供できるか。その仕組みや機会を意識的に作ることで、「収集心」を活かした貢献ができます。仕事上であれば、定期的に「◯◯通信」のような形で、自分が集めた情報のうち参考になりそうなものを提供するのでもいい。
私自身は、コーチ仲間の集まりでギャラップの提供している情報などを共有することで貢献しています。無意識に相手も必要とするだろうとばんばん情報を流すのではなく、「必要であれば使ってね」という感覚で流すと、情報の押しつけにはなりにくいです。他者貢献として活かすという目的があれば、自分だけでなく他の人にとっても有益な情報を集めようという意識にもつながります。また、自分が情報を集める人だと周りの人が知ることで、さらに自分に情報が集まりやすくなるかもしれません。
次に、人間関係構築力として使うことです。「収集心」の「知りたい」という欲求は、人にも向きます。自分の知らない相手のことや相手の持っている情報に興味を持ち、あれこれと質問して情報を引き出そうとする。相手からすると、そうやって自分に関心を持って尋ねてくれる人に、ある種の親近感を抱きます。誰かが自分の知らない未知の話をしていると、身を乗り出すように興味津々で聴くでしょう。それもまた、相手に親近感を覚えさせます。
場合によっては相手そのものには興味がなくその人の持っている情報に興味があるだけだとしても、相手からすると自分の話を興味深く聴いてくれていることには変わりありません。今でも勝手にそう機能しているかもしれないので、それを自覚して意識的に使えば、もっとうまく機能させられます。元々人付き合いを苦手に感じている人は、「意外とそうでもないのかも」と思えるだけでも随分と気持ちが違ってくると思います。
実際、「学習欲」「収集心」を中心に思考系が上位の人は、実際にお会いすると想像した以上に人懐っこく思える人も多いのです。動機づけはどうあれ、それを人と関わることに使っていけば、立派に人間関係構築力として機能します。
ストレングスファインダーは、何ができるかではなく、どうやればうまくいくかを教えてくれるものです。自分なりの動機づけをどううまく方向づけして活用していくかが大事だということです。
対比される資質
「学習欲」と「収集心」は、共に上位に来ることが多い資質ですが、楽しんでいるものが違います。「収集心」を上位に持つ人は、幅広い情報を集めることそのものに喜びを感じます。特定のことに限らずいろいろな分野から情報を集め、「いつか使うかもしれない」と考えて蓄え続ける。集めた情報そのものが価値なのです。
「学習欲」を上位に持つ人は、知らなかったことが知っている状態になっていく過程を楽しみたいという欲求から、情報を得ることに加えて、それを理解し、使えるようになる過程に喜びを感じます。流れとして考えると、まず「収集心」が働いて何かについて調べて情報を集め、その中の特定の何かにさらに興味を惹かれ、本を読んだり講座に出かけたりして習得していくのが「学習欲」です。
この違いは、相互理解がないとすれ違いを生みます。「収集心」から見れば「学習欲」は一つのことに時間を掛けすぎているように見え、「学習欲」から見れば「収集心」は集めるだけで身につけていないように見える。しかし、広く集める人と、深く身につけていく人は、どちらも組織に欠かせません。両方を上位に持つ人は、幅広いことを学ぶ人になります。
他の資質との組み合わせ
「収集心」と「学習欲」が組み合わさると、幅広いことを学ぶ人になります。「学習欲」には、知らなかったことが知っている状態になっていく過程を楽しみたいという欲求があります。情報を集めることを楽しみながら同時に「学習欲」も満たしている感じで、「幅広いことに興味を持つ」が加速されて、興味を持ったら何でも「学びたい」になります。一緒に上位になりやすい組み合わせです。
「収集心」と「分析思考」が組み合わさると、集めた情報から「なぜ」を解き明かす人になります。「分析思考」には、なぜそうなるのかを知り、筋が通っていることを確かめたいという欲求があります。「知れた」で十分な「収集心」に、疑問を解消したいという動機が加わるので、集めた情報を深く分析して筋道の通った洞察を得られます。私自身がこの組み合わせで、「なぜコロナなのか」という疑問を解消したくて調べたのはこのためです。
「収集心」と「規律性」が組み合わさると、集めた情報をきちんと整理して蓄えられる人になります。「規律性」には、何事も秩序立った、予測の立つ状態にしておきたいという欲求があります。集めっぱなしになりがちな情報を、きちんとフォルダを分けて整理して保存するので、必要なときにすぐ取り出せます。
「収集心」と「コミュニケーション」が組み合わさると、集めた情報をわかりやすく伝える人になります。「コミュニケーション」には、言葉で相手にわかってもらいたいという欲求があります。頭の中に詰まった多彩な情報を、相手に伝わる形で話せるので、周りの人にとって役立つ情報を効果的に提供できます。
このように、「収集心」は組み合わさる資質によって表れ方を変えていきます。ただ、根っこは一つです。知らないことを知りたい、集めて蓄えておきたい。自分の当たり前が才能であることに気づき、誰がどんな情報を必要としているかに意識を向ければ、その才能でもっと効果的に役に立てるのです。
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