ストレングスコーチの知識茂雄です。
影響力の資質である「指令性」について解説していきます。
根源的な欲求、動機づけ
「指令性」を上位に持つ人の根源にあるのは、自分が主導権を握って物事を決め、白黒はっきりさせて動かしたいという欲求です。
原語はCommand。文字通り「指令」「命令」という意味です。影響力の資質の共通点は、自分の思い通りに物事を動かしたいという欲求があることですが、その意味で「指令性」はザ・影響力と言ってもいいかもしれません。
「指令性」は、「自己確信」と並んで、診断を受けた人の中で上位5つに持っている人が最も少ない資質です。割合で言えば20人に1人もいないくらい。それだけに、本人が自分の資質を理解することはもちろん、周りの人が理解しておくことも大切なので、その視点も入れて書いていきます。
「指令性」を上位に持つ人は「決める」ことにためらいがありません。徹底的にあいまいさを排除し、白黒はっきりさせることを求めます。やるのか、やらないのか。
その種の「決断」を他者にも求めます。そして、自分が決めた通りに物事を実行するために、率直な言葉で人に指示を与え、人を動かしていく。この部分がまさに「指令」の部分です。
何事も自分で選択できることが大事で、自分のやるべきことは自分が決めるという姿勢なので、自分の選択の余地がない一方的な指示命令は嫌います。この「主導権を握って決め、動かしたい」という欲求こそが、「指令性」という資質の核心です。
振る舞いの特徴
決めて動かしたい欲求は、まず「物言いが率直」という形で表れます。
「指令性」を上位に持つ人は、基本的に物言いが率直です。回りくどい言い方はしませんし、むしろ嫌いなはずです。白黒はっきりさせ、決着をつけることが最も大事なことであり、相手がどう思うかは基本的には関係ありません。
だから相手を選ばず率直で、相手が誰であれ、必要なことであれば率直に要求します。その発する言葉には自然と力強さが宿り、ある意味有無を言わせず相手を従わせてしまう力強さがあります。思ったことをそのまま口にする率直さと、対立を恐れず言葉を繰り出すそのあり方が強い言葉を生み、それが圧倒的な存在感を発することにつながります。
次に、「対立を恐れない」という形で表れます。真実から目をそらすことなく白黒はっきりさせる、決着をつけることを大事にしていて、白黒はっきりさせるということは時に対立を招くこともあります。
つまり「指令性」を上位に持つ人は、対立を恐れることがありません。「調和性」が対立を好まず、むしろ対立を恐れるのに対し、「指令性」は対立を恐れず、むしろ対立を超えたところに得るものがあると考えます。自分を貫くということは場合によっては周りの人と対立を招くこともあり、そういう対立を恐れていては自分を貫くことはできないわけです。
そして、「率直なフィードバックを求める」という形で表れます。自分が率直な物言いをするだけに、他の人からのフィードバックも率直な言葉として受け取りたいと思っています。自分に対する批判を真正面から受けて立ち、あいまいなフィードバックよりも率直なフィードバックを求める。
そして、批判的なフィードバックでも、自分が納得すれば改める素直さを持っています。「指令性」を上位に持つ人にとって、批判も成長の糧なのです。人を喜ばせるために思ってもいないことを口にすることもなく、本当に裏表がなく、あいまいさがありません。
強みとして活かせている状態
この欲求が強みとして機能しているとき、「指令性」を上位に持つ人は、存在そのもので周りに信頼と安心を与える人になります。
その力強さが大いに活かされるのは、何かが行きづまって動きが止まってしまっているときや、非常事態、緊急事態です。会議で議論が発散して迷走気味になっているとき、「調和性」を上位に持つ私はそういう流れについ身を任せがちです。しかし、「指令性」を上位に持つ人であれば「このまま議論を続ける意味ってあるんですか?」と発言できます。
その投げかけに皆がはっとなって気づき、方向修正が可能になる。非常事態において、ぼうぜんとする周りをよそに迷いなく立ち上がり、主導権を握る。
放っておいても誰かが陣頭指揮を執るのであればその人に任せますが、誰もいない、そしてその状況が放置できないとなると、自らが指揮者となってその場を収め、てきぱきと周りに指示をして非常事態を収めていきます。そのあり方に、周りの人は頼もしさを覚えると共に信頼の念を抱きます。
そして、その言葉の重みです。「指令性」を上位に持つ人は、人を喜ばせるために思ってもいないことを口にすることはありません。ということは、その発言は額面通り受け取っていいということです。
人を褒めるときは掛け値なしにそう思っている。普段そういうことを口にすることが多くないだけに、ここぞというときの褒め言葉や励ましの言葉は、力強く人の背中を押します。
誰かが困難に直面したとき、「あなたなら絶対できる。大丈夫だよ」という励ましは、他の誰の言葉より重く響き、弱気になった人の背中を力強く押し、何か大きなことに挑戦する勇気を与えます。周りの人は、「指令性」を上位に持つ人が決しておべっかなど使わないことを知っているからです。
妨げになってしまっている状態
同じ欲求が裏目に出ると、まず悪気なく威圧してしまいます。
たとえ対立を招くことになろうとも白黒の決着をはっきりさせることをいとわないところが、誰かが判断で迷っているときに「やるの?やらないの?どっち?」という問いかけにつながります。場合と相手によっては、威圧されているように感じさせてしまうかもしれません。
「指令性」を上位に持つ人からすれば相手を威圧することが目的なのではなく、どうするのかの決着をつけたいだけなのに、相手を萎縮させてしまうのはもったいない。特に「調和性」や「共感性」を上位に持つ人は、率直な物言いを「怖く」感じて近寄りがたく感じている可能性があります。
今進んでいることに自分が意味を見出せないでいると「そんなの意味ないでしょ」と思わず言ってしまう。本人にとってはただそう思ったことを言っているに過ぎず、それ以上でも以下でもないそのままの意味なのですが、周りの人はそれを「否定された」「非難された」と受け取ってしまうことがあるのです。
だからと言って、場面と相手を考えて時にはもっと丁寧に、というのはあまり機能しないのではないかと思います。表現が率直すぎて相手によっては言葉が足りていない可能性があります。できるだけ、なぜ自分がそう思うのかの理由を付け加えたり、皆のこれまでの努力を否定しているわけではないことを付け加えたりと、言葉を足していくことを心掛けるといいと思います。
面倒だし難しいことだとは思いますが。何より、自分の特性を周りの人たちに知っておいてもらうことが大事です。自分はとにかく物事を明確にしたいだけであり、誰かを責める意図はないこと。
回りくどい言い方が嫌いで率直な物言いになってしまうだけに、時々物言いをきつく感じさせてしまうことがあるかもしれないこと。自分に落ち度があればぜひ率直に言ってほしいこと。これらを繰り返し伝えておくことです。
もう一つは、悪気なく萎縮させることです。白黒はっきり決着をつけたい人であるだけに、自分なりに「こうだ」という明確な意見を持っていることが多いものです。それを声高に率直に主張したり、誰かの意見に「それは違う」とあからさまに否定したりすることもあるでしょう。
それによって、他の人が意見を言いづらくなってしまう。本来「指令性」を上位に持つ人は反対意見もどんどん言ってもらって構わないのに、相手がそう捉えずに萎縮してしまうのはもったいないことです。自分の発する言葉は意図せずして強い影響力を発揮することを自覚しつつ、自分の言動をうまく扱っていく必要があります。
特にリーダーの役割に就いている人は、自分の影響力を無意識で使っていると「物言わぬ人たち」を作り出してしまいかねません。一人ひとりの意見にしっかりと耳を傾け、相手の自発性を引き出し、チームとしての総合力を上げていくことで、より自分の影響力が効果的に発揮できます。
人間関係構築力が低い場合は、自分が対立を恐れないだけに人の気持ちを置いていきがちなので、「共感性」などを上位に持つ人に手伝ってもらうといいでしょう。メールなども表現が淡白で端的になりすぎるきらいがあるので、他の人に表現を確かめてもらうと無用な行き違いを防げます。
効果的に活かす方法
「指令性」を効果的に活かす鍵は、自分の特性を周りに知らせることと、聞いた上で最後は自分で決めることです。
まず、自分が「率直に言ってほしい」人でもあることを、周りの人に伝えておくことです。感情的な対立を恐れず物が言える「指令性」を上位に持つ人に対し、少なくない人がその存在感を怖く感じてしまっています。
だから周りの人は率直に物を言うことを難しく感じ、自分が求めているものと逆の対応をしがちなのです。それがどんなに耳の痛いことであれ、自分は聞く耳を持っているということを、繰り返し周りの人に伝えておきましょう。
たとえネガティブなフィードバックであってもきちんと受け止め、自分が納得しさえすれば素直に改められる人であることを伝えるのです。周りの人にとっては、「指令性」を上位に持つ人、もっと広く言えば物言いが端的で率直で単刀直入な人に対しては、こちらもできる範囲で同じように率直にやり取りすることが大事です。
人は、自分が当たり前にやっていることを無意識に他の人にも求めるもの。率直な態度で関わる人は、率直な態度で関わってほしい人でもあるのです。場合によっては「そんな言い方は配慮が欠けていて不愉快です」と言っても大丈夫。合理的な助言であれば素直に従う人たちです。
次に、弱さを見せることです。普段力強い言葉を発するので、決してめげることのない強い人と思われがちです。
でも、同じ人間である以上、弱点だってあるし、時に弱気になることだってある。自分の弱みを正直に見せると、周りの人も親近感を覚え、安心してやり取りしやすくなります。「自分の弱さを見せてもいいんだ」という安心感を周りに与える姿勢でもあります。
そして、聞いた上で決めることです。「指令性」の強みは、何事も「こうだ」と言い切れるところ、そして「こうだ」と思ったことを迷わずやり切れるところ。ある意味そういう「強さ」が強みです。
状況が混沌としていて迷いが生じやすいとき、だからこそ「決断」が求められるとき、その決断がどんな抵抗をもたらすことになろうとも、きっぱりとした態度で決断を下し、物事を前に進ませていく。その良さを活かすためにこそ、より正しい方向へと物事を導くためにこそ、他人の言うことにしっかりと耳を傾けることが大事です。
その上で、最後は自分で「決める」。「これが効果的だ」と思えばそれまでと違うことでも方向転換をいとわない人なので、自分の影響力を発揮して成果を出していくためにどう振る舞うのが効果的なのかを常に考えることが大事です。これができると、ザ・影響力である「指令性」を最大限に活かせます。
対比される資質
「調和性」と「指令性」は、対立との向き合い方が対照的です。「指令性」を上位に持つ人は、対立を恐れず、むしろ対立を超えたところに得るものがあると考え、白黒はっきりさせます。「調和性」を上位に持つ人は、対立を避け、皆が同じ方向を向いて着実に物事を前に進めたいという欲求から、対立を好まず、むしろ恐れます。
「共感性」も対照的で、相手の気持ちに最大限配慮するため、メールなどの文字でのやり取りでは丁寧で遠回しな表現になることが多いです。そのため、「指令性」の物言いに圧を感じたり怖く感じたりする一方で、「指令性」からは「共感性」のやり取りがまどろっこしく思えることがあります。
この違いは、相互理解がないとすれ違いを生みます。「調和性」から見れば「指令性」は場を乱しているように見え、「指令性」から見れば「調和性」は決めずに流しているように見える。しかし、「指令性」を上位に持つ人は物事をはっきりさせたいだけであり、相手を攻撃しようという意図はありません。
「調和性」や「共感性」を上位に持つ側は、率直な表現をする人はこちらから率直に伝えても構わない人だということを覚えておくといい。決断して前に進める人と、皆の足並みを揃える人は、どちらも組織に欠かせません。いわゆる希少な資質なだけに理解されづらいかもしれませんが、周りの人が理解しておけば、むしろ裏表がなくとても付き合いやすい人なのです。
他の資質との組み合わせ
「指令性」と「活発性」が組み合わさると、迅速で決断力のあるリーダーシップを発揮する人になります。「活発性」には、思ったことをすぐに行動に移し、物事を始めたい、始めさせたいという欲求があります。「今すぐ対応策を考えて実行しよう」と明確に指示を出し、自らも即座に動くので、遅れている物事を一気に動かせます。どちらも思ったことをそのまま口にする資質なので、率直さはさらに際立ちます。
「指令性」と「自我」が組み合わさると、主役として物事を率いて認められようとする人になります。「自我」には、自分を重要な存在として認められたいという欲求があります。主導権を握りたい欲求に、自分が中心となって貢献したい欲求が重なるので、自らリーダーシップを取る場面で最も力を発揮します。
「指令性」と「戦略性」が組み合わさると、先を見通した上で迷いなく決断する人になります。「戦略性」には、全体を見渡して先を見通し、最善の道筋を選びたいという欲求があります。複数の選択肢の中から最善を選び、それを率直な言葉で周りに示して動かすので、混沌とした状況でも方向を定めて前に進ませられます。
「指令性」と「共感性」が組み合わさると、率直さに温かさが加わった人になります。「共感性」には、人の気持ちを大切に扱い、人が笑顔でいることを自分の喜びにしたいという欲求があります。白黒はっきりさせながらも相手の気持ちを感じ取れるので、力強い言葉が人を萎縮させるのではなく、背中を押す方向に働きやすくなります。
このように、「指令性」は組み合わさる資質によって表れ方を変えていきます。ただ、根っこは一つです。自分が主導権を握って決め、白黒はっきりさせて動かしたい。人生のハンドルは自分で握る。「指令性」を上位に持つ人が座る席は、常に運転席です。自分の行き先は自分で決め、どの道を通り、どう向かうかも自分で決める。その存在そのもので、周りに信頼と安心を与えられるめったにいない存在なのです。
上記はギャラップに承認されたものではなく、ギャラップの認可も推薦も受けていません。クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)に関する意見、見解、解釈は、株式会社ハート・ラボ・ジャパン代表 知識茂雄だけの考えです。
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