ストレングスコーチの知識茂雄です。
人間関係構築力の資質である「個別化」について解説していきます。
根源的な欲求、動機づけ
「個別化」を上位に持つ人の根源にあるのは、人それぞれの違いを見抜き、それぞれに合った関わり方をしたいという欲求です。
原語はIndividualization。文字通りです。人間関係構築力の資質なので、まず対人でどう働くかを考えると、「個別化」を人に向けた場合は、それぞれの人を「個別に扱う」という意味になります。個別に扱う前提にあるのは、「人はそれぞれに違う」ということ。違うからこそ、その違いに合わせて適切に関わる。これが「個別化」を上位に持つ人の、人と関わる際の動機づけです。
人それぞれに違うことが当たり前になっているからこそ、一人の人を目の前にしたとき「この人は他の人とどう違うのか?」という目線でその人を観察します。どんな人であっても一人ひとりに何らかの違いがあることは誰もが理解していますが、多くの人は「個別化」を上位に持つ人ほどには、細部の違いに意識を向けていないということです。
一人ひとり異なる個性を尊重し、違いを見極め、それぞれに適切な関わり方をしていく。この「違いを見抜き、違いに合わせて関わりたい」という欲求こそが、「個別化」という資質の核心です。
振る舞いの特徴
違いを見抜きたい欲求は、まず「無意識に人を観察する」という形で表れます。
「個別化」を上位に持つ人は、無意識に人を観察しています。「この人は、他の人とはどう違うのだろう?」という目を向けながらその人を観察し、その人固有の個性を見極める。そして、その情報を元に、一人ひとり異なるふさわしい関わり方をします。
「個別化」を上位に持つリーダーであれば、メンバー一人ひとりの特徴をよくつかんでいます。あるメンバーには情報を事細かに与える、あるメンバーにはあまり密に関わらず任せる、あるメンバーには定期的に進み具合を確かめる、といった個別の対応をします。それぞれのメンバーが、どういう対応を取ると動きやすいのかを把握しているからこそできることです。
「あなたは、◯◯なところがあるよね」と、相手が聞くと「何でわかるんだろう?」と驚くくらい、人のことをよく観察して知っています。
次に、「違いをそのまま受け入れる」という形で表れます。たとえ自分と仕事の進め方が異なっていても、それを否定することなく受け入れます。相手は自分の個性を尊重してもらえて、伸び伸びと自分らしくいられます。「着想」を併せ持つ人は、とびきり個性的な人も「この人面白い」と喜んで受け入れます。
そして、「自分自身も個として扱われたい」という形で表れます。「個別化」を上位に持つ人は、自分自身も他の人とは違う「個」として尊重されることを求めます。「看護師の人って◯◯ですよね」「エンジニアって◯◯ですよね」のように、職業などで一括りにされて一般論で語られることを良しとしません。
あくまで他者とは違う、個の一人として扱ってほしいのです。「着想」も併せ持っていると、自分が他と違う独特な存在であることを大切にしているので余計そうなりやすく、そこに独自性を大切にする「自我」が加わると、それこそとびきり個性的な人になるでしょう。
「個別化」の対象は、人だけでなく物事にも向かいます。地方ごとにどんな特色があるのかに興味を持つとか、自分が担当する会社の特色に応じて対応を変えるとか。大勢の人の前で話す場面では、参加者がどういう属性なのかによって伝え方を変えたい感覚があります。
強みとして活かせている状態
この欲求が強みとして機能しているとき、「個別化」を上位に持つ人は、一人ひとりが「このままでいいんだ」とありのままでいられる、安心の場を作る人になります。
人間関係構築力として考えた場合、「個別化」の強みは、相手に「理解してもらえている」と感じさせるところにあります。無意識にそれぞれの人を観察した上で、その結果に基づいて適切に関わるので、相手からすると「ちゃんと自分のことを見てくれている」となります。詳しく状況を知りたい人には丁寧に説明する。自分で決めたい人には細かい指示を与えず、最低限必要な情報だけ与える。相手の特性に合わせ、相手にとって快適な関わり方をする。
「ちゃんと見てるよ、知ってるよ」という言葉にならないメッセージを与えてあげられるのが、目には見えない強みです。人種、性別、年齢といった枠にとらわれず、一人ひとりをただ「個」として扱うので、生まれつき多様性を体現しています。
「みんなちがって、みんないい」。そのあり方が「このままでいいんだなあ」という安心感を与えるのです。
そして、他の誰よりも、ひょっとしたら本人よりも、その人のことをよく知っています。多くの人は、自分の才能に気づかないまま、花開かせないままでいます。人それぞれの違いを見抜く確かな目を持つ「個別化」は、その人の中に眠ったままでいる才能に光を当てます。
才能を花開かせるにはその才能に見合う土壌が必要ですが、一人ひとりがどんな環境で、どんなやり方で、どんな関わり方で光り輝くのかを知っている。まさに、才能育成の演出家のような存在です。
それぞれの得手不得手を把握できるので、それぞれの人がどんな役割を担うと最も活きるかを知っていて、適材適所の人材配置が得意です。「最上志向」を併せ持っていれば、それぞれの人が持つ強みに目を向けるので「それぞれの強みを活かし」という目線に自然となり、そこに組み合わせることが得意な「アレンジ」が加わると最強です。
妨げになってしまっている状態
同じ欲求が裏目に出ると、まず「えこひいき」していると見られてしまいます。
「個別化」を上位に持つ人は、人と関わるのを好みそうな人とはよく会話をし、口数が少なく一人でいることを好みそうな人はある意味放っておいてあげる、というように、結果的に一人ひとりと関わる量が違ったりします。あくまで相手に合わせて個別対応をしているだけなのですが、客観的に見ると一貫した関わりにはなっていません。
「あの人にはこうなのに、なぜ自分だけこうなの?」と思っている人が周りにいるかもしれません。特に「公平性」を上位に持つ人は、えこひいきが嫌いなので、そういう反応になりがちです。自分がなぜ一人ひとりに異なる対応をしているのか、その理由を周りに説明して理解を求めることも必要です。
「公平性」の一貫性の本質は「基準が一貫している」ことなので、こういう人に対してはこう対応している、という理由が明確になれば納得できる部分があります。個の事情を尊重するあまり、何かの決まりごとに例外を適用しがちなところも、長い目で見てその個別対応が生産性を落とすことにならないかをよく考えましょう。
もう一つは、相手が見えないと動けなくなることです。勉強会や研修の講師を務めるなど、大人数を対象に何かを伝えなければならない際、対象がどんな人たちかがわからないと、何をどう伝えていいかがイメージしづらいのです。「対象が異なれば異なる伝え方がある」と当たり前に考えるので、そこにどんな人がいるかわからない不特定多数を相手にすること自体が苦手なのです。
だから事前に丹念に対象者について確認すると思いますが、どうしてもその情報が得られないこともあります。そういうときは、自分の中でどういう人たちを対象とするのかを仮に設定してしまうのもありです。対象が明確にならないからともんもんとして動けない状態でいるよりは、前に進める方がいい。
そして、自分の資質を上位に持つ人は全体から見れば少数派だということも思い出してください。参加者は、そこまで自分たちにぴったりの伝え方を求めてはいないのです。その事実を踏まえて、「個別対応」の基準を少し緩められるといいですね。
個別対応したいがために、年賀状やお礼状に一人ひとり違う気の利いた言葉を書きたくて時間を掛けすぎてしまうのも同じです。しんどいようであれば、それだけ手間暇掛ける価値があるのかを自分に問いかけて判断しましょう。
そして、決めつけと操作です。自分がつかんでいる一人ひとりの特徴は、必ずしもその人のすべてではありません。自分の内面をあまり表に見せない人は必ずいますし、一人ひとりに対して集められる情報にも限りがあります。
ここを自覚しておかないと、相手にとっては「決めつけられている」という感覚に陥りかねません。自分がつかんでいる相手の情報は必ずしもすべてではないのだと自覚し、常に情報を更新する感覚で人と接することが大事です。
さらに言うと、相手のことをよくわかっているだけに、その人の行動のスイッチの入れ方も見えていることが多い。こちらとしては相手に快く動いてほしいと思っての対応なのに、相手から見ると「操作されている」ように感じさせていることがあるかもしれません。「戦略性」も併せ持っていると、どう関われば気持ちよく動いてもらえるかが見えてしまうだけに、場合によってはそうなりがちです。
ここは、「自分のためだけに」資質を使っているのか、「自分を含めた皆のために」使っているのかで違ってきます。自分を含めた皆が幸せになるために自分の資質を使う。これがいちばん大事なのは間違いありません。
効果的に活かす方法
「個別化」を効果的に活かす鍵は、見抜いた特徴を本人と周りに伝えることと、対象をよく知ることです。
まず、自分には見えているその人の特徴を、その本人に教えてあげることです。人はよく自分のことをわかっていないものです。特に、自分の当たり前がいかに他の人にはない強みとして発揮されているのかを伝えてあげることは、その人が自己肯定感を上げてさらに強みを発揮していくことにつながります。
「あなたって、◯◯のとき◇◇するよね」「えっ、そう?」。本人も気づいていないその人の思考の癖に気づかせてあげてください。人間ストレングスファインダーとして。その人の良いと思うところを、たくさん言葉にして伝えてあげましょう。
「あなたのこういうところが素敵」という一点に絞った承認は、相手にとって最高の心のガソリンです。
次に、その人の特徴として捉えていることを他の人に教えてあげることです。「個別化」を上位に持つ人は無意識に人それぞれの違いを感知し、それぞれにふさわしい関わり方を当たり前にやっていますが、「個別化」が下位の人にとっては決して当たり前ではありません。
だから、何かと衝突し、すれ違いがちな両者に、それぞれの適切な関わり方を教えてあげることで貢献できます。「この人はこういう考えを出すのが得意だから、意見を聞いてみて」というように、チーム全体がその人の強みを理解し、最適な役割を与えることで、より良い成果を生み出せます。
もしチャンスがあれば、自分が捉えているメンバー一人ひとりの特徴とそれぞれに合わせてどう対応しているかを語る機会を設けると、関わり方が異なることの理由がわかり、周りの人の理解も深まります。
そして、対象となる人や物事をよく知ることです。誰かに何かを提供する際、相手がどんな人かによって提供の仕方を変えるのがこの資質なので、自分が何かを提供する相手がどんな人たちなのかの情報を意識的に入手することが、「個別化」を活かす上で大切です。
相手や対象のことを深く知れば知るほど、どう適切に対応するかの打ち手が見えてきます。元々違いを見抜く目を持っている資質ですが、「知る」「理解する」ことにより意識を向けていけば、才能はより活かされます。対象が人であればストレングスファインダーもそうですし、心理学系の学びもいい。「収集心」「学習欲」を上位に持つ人であれば、すでにそうされているかもしれません。
今自分がつかんでいる特徴はあくまで今の情報に基づいているものであり、必ずしも全体像をつかんでいるとは限らないとの自覚を持ちながら、探求を続けること。人の多様性は本当に幅広いものなので、そうやって自分の持つ「多様性」の情報を増やしていけば、「個別化」の才能はより磨かれていきます。
対比される資質
「公平性」と「個別化」は、個と全体のどちらを見るかが対照的です。「個別化」を上位に持つ人は、一人ひとりの個性や特性を大切にし、それに基づいて対応を変えます。「公平性」を上位に持つ人は、一貫した基準で誰に対しても公平に接したいという欲求から、人との関わり方に関しても一貫していることを大事にし、誰に対しても分け隔てなく接します。
考え方が真逆というわけでも、必ず順位が真逆になるというわけでもありませんが、「個別化」の「個別」という考え方と「公平性」の「一貫性」という考え方が、場面によってはぶつかることがあります。「個別化」から見れば「公平性」を上位に持つ人の特性も一つの個性として見なせると思うので直接の問題にはならないかもしれません。ただ、チームに「公平性」を上位に持つ人がいるならば、相互理解しておくことが大事です。
この違いは、相互理解がないとすれ違いを生みます。「公平性」から見れば「個別化」はえこひいきに見え、「個別化」から見れば「公平性」は個性を見ていないように見える。しかし、どちらが良い悪いではなく、大切にしていることが違うだけです。個を見る視点も全体を見る視点もどちらも大切である以上、お互い理解し合えていれば最高のパートナーとなり得ます。
両方を上位に持つ人も少なくなく、そういう人は全員に一貫した基準を設けつつ、個々の状況や特性に応じて柔軟に対応することを、無意識に体現しています。
他の資質との組み合わせ
「個別化」と「最上志向」が組み合わさると、それぞれの人の強みを見抜き、活かす人になります。「最上志向」には、優れたものをさらに引き上げたいという欲求があります。人それぞれの違いを見抜く目が、その人の強みや得意に向くので、「それぞれの強みを活かし」という目線が自然と生まれ、才能に光を当てて花開かせることができます。
「個別化」と「アレンジ」が組み合わさると、適材適所の人材配置に長けた人になります。「アレンジ」には、様々な要素を組み合わせて無駄なく成果を出したいという欲求があります。一人ひとりの特徴を見極めた上で、それを組み合わせて全体を作れるので、この人がリーダーだとチームとしての相乗効果を引き出しやすくなります。「最上志向」も加わると最強です。
「個別化」と「共感性」が組み合わさると、その人の特性だけでなく気持ちの動きにも寄り添える人になります。「共感性」には、相手の気持ちを自分のことのように感じ取る働きがあります。誰かがストレスを感じていると察知したとき、その人の特性に合わせた形で支えられるので、深い理解と配慮を示せます。
「個別化」と「成長促進」が組み合わさると、一人ひとりの成長を支援することに優れた人になります。「成長促進」には、人の成長の兆しを見つけ、その成長を支えたいという欲求があります。それぞれの成長の段階に応じた関わり方ができるので、個々のメンバーが自分の可能性を発揮できるように導き、チーム全体の成長を促せます。
このように、「個別化」は組み合わさる資質によって表れ方を変えていきます。ただ、根っこは一つです。人それぞれの違いを見抜き、それぞれに合った関わり方をしたい。人は一人ひとりが違って当たり前。「個別化」を上位に持つ人が当たり前に発している「違っていいんだよ」というメッセージが、人に安心を与えるのです。
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