ストレングスコーチの知識茂雄です。
実行力の資質である「回復志向」について解説していきます。
根源的な欲求、動機づけ
「回復志向」を上位に持つ人の根源にあるのは、うまくいっていないもの、本来あるべき状態から離れてしまったものを、元の状態に戻したいという欲求です。
原語はRestorative。文字通り「回復させる」「復元させる」という意味合いです。その言葉の意味する通り、「回復志向」は、物事であっても人であっても、本来のあるべき状態に戻したいという欲求に基づき、実際にそのように行動を起こす実行力の資質です。言い換えると、ある種の問題を見つけ、それを解決、解消することに強みがあります。
「問題」というのは、本来あるべき姿と現状にギャップが存在することです。「回復志向」を上位に持つ人は、物事の本来あるべき姿に対し、足りないところ、欠けているところに目を向けます。無意識のレベルで、問題のあるところにアンテナを張っているような感じです。
その視点が物事に向くのか、人に向くのかは、他の資質との組み合わせによります。物事であれば、仕組みや手順に潜む問題点。人であれば、その人のできていないところ、足りないところ、何かを損ねているところです。
壊れて動かなくなったものを見かけると修理したくなる、その状態で放置しておきたくない。人に意識が向くと、健康を損ねた人を元の健康な状態に戻してあげたくなる。この「本来あるべき状態に戻したい」という欲求こそが、「回復志向」という資質の核心です。
振る舞いの特徴
元に戻したい欲求は、まず「問題を見つけて、解決に動く」という形で表れます。
「回復志向」を上位に持つ人は、何かの問題点を見つけると、それを放置せずに解決したくなるし、実際に解決、解消に向けて動きます。ここが実行力の資質たる理由です。そもそも問題に気づきやすいという特性も持っていて、一旦見つけた問題に対しては、おざなりな対応を取ることなく、そこにある根本的な原因を取り除こうとします。
多くの人が問題がある状況を好まずやる気が下がる中で、「回復志向」を上位に持つ人はむしろやる気高く問題解決に向き合います。何か問題を抱えている人を見ると放っておけず、一緒になってその人の問題を解消するために動くところもあります。「共感性」が加わると、問題を抱えて落ち込んでいる人の気持ちを察して余計に放っておけない気持ちになり、その人が笑顔を取り戻す手伝いがしたいという思いが強く出ます。
医療、福祉、介護の職に就いている人に「回復志向」を上位に持つ人が多いと言われるのも、自然と人を治したい、癒したいという意識が働くので、結果的にそうなりやすいということです。向いているということでは必ずしもありません。
次に、「到達点がある」という形で表れます。改善という意味でよく対比される「最上志向」が、今すでにできているものをさらに良くする方向で、際限なく改善を目指すのに対し、「回復志向」には本来のあるべき姿という到達点があります。
壊れたものであれば「直る」、健康を損ねている人であれば「治る」、問題があれば「解決する」と、明確なゴールがあるのです。だから、対象が何であれ、一旦あるべき姿に戻ってしまえば、その対象への興味を失うという特徴があります。
自分が関わったモノやヒトが一旦元に戻れば、意識は離れて、また次の対象を探す感じになります。ただ唯一、対象が人そのものになると話は違ってきます。人そのものには完成形などないからです。
だからこそ、自分に欠けているものを満たそうとして努力を続けます。「回復志向」が自分自身や他人に向いた場合は、その人の足りないところに目を向け、自分に対しても他人に対しても「直す」という感覚が出てきます。「最上志向」が自分の強みや良さを指摘される方が響くのに対し、「回復志向」を上位に持つ人は、改善すべき点も指摘してもらうと自分が何をすべきかが明確になり、ありがたく感じると思います。
そして、「問題があるのは当たり前」と捉えます。物事でも人でも、何かしら問題があることを当たり前だと捉えているので、何かしらできないことがある人に対しても「待てる」感覚があります。緊急のトラブルが発生しても過度に慌てることなく対処できます。「適応性」や「ポジティブ」が併せて高い場合は、「起こったことは仕方ない」「何とかなるだろう」と、場合によってはむしろわくわくしながら対処にあたります。
強みとして活かせている状態
この欲求が強みとして機能しているとき、「回復志向」を上位に持つ人は、人にも物事にも本来あるべき状態を取り戻させ、世の中に安定と安心をもたらす人になります。
何と言っても、問題解決の力に長けているところが最大の強みです。問題を見つける力にも、見つけた問題を解決に導く力にも秀でていて、実行力の資質でもあるので、実際に解決に向けての行動が伴います。何か問題が起こり混乱している状態にあっても、その状態を一つひとつ元に戻していけば必ずその問題を解決できると考える。
問題を目の前にして戸惑う人が多い中、必ず解決できると疑わないその姿勢に、周りの人は頼もしさを覚えます。他の人が見過ごしそうな問題も目ざとく見出し、細かな改善を繰り返し、プロジェクトを本来あるべき軌道にしっかり乗せていく。
多くの人が放置しがちな小さな問題を放置しない。小さな穴も放置すればいずれ大きな穴となって取り返しのつかないことになりますが、「回復志向」を上位に持つ人は、組織がその落とし穴にはまることを防いでくれます。
そして、人に対しては、誰かが問題を抱えて困っているとき、心が弱って落ち込んでいるとき、そんな人たちを見捨てることなく支えます。多くの人たちが離れていく中で、見捨てず寄り添ってくれる「回復志向」を上位に持つ人に、周りの人は深い感謝と信頼の念を抱きます。
その人の抱える問題の解決に向けて、自分が有益な情報を持っていれば喜んで提供し、助言してあげる。「成長促進」を併せて上位に持つ人だと、人材育成において、何かしらできないことがある人も辛抱強く見守り、改善に向けて共に取り組む姿勢になるでしょう。
この世から、広い意味での問題がなくなることはありません。必ずどこかで誰かが問題解決をしてくれないと世の中は回らない。その意味で「回復志向」を上位に持つ人は、とてもありがたい存在なのです。
妨げになってしまっている状態
同じ欲求が裏目に出ると、まず駄目出しと受け取られてしまいます。
ついつい問題のあるところに目を向けがちなので、物事の良い面を見過ごしがちです。人に対してその人が直した方がいいところばかりを指摘してしまうと、相手は駄目出しされたように感じてしまい、あまり心地よくないかもしれません。特に相手が「最上志向」や「ポジティブ」を上位に持っていると、その傾向が出やすいと思います。
「回復志向」を上位に持つ人には、その人本来の可能性が見えています。だからこそ、その人に今足りないことを見てもどかしくなる。駄目出しとしてではなく、「あなたはもっとできるはず」という思いがあるからこその助言であることを、言葉にして伝えましょう。
「あなたにより良くなってほしいから、改善してほしいことを伝えます」という伝え方をすると、相手も受け取りやすくなります。そして、本来の姿と現状のギャップに目を向けるということは、今どこまでできているかをわかっている人でもあります。
自分ではわかりきったことで、あえて言う必要はないと思っていても、相手がすでにできていることを言葉にした上で「さらに良くするためには」という言い方に変えるだけでいいのです。言っていることは同じでも、きっと相手の受け取り方は変わります。自分が見えている完成形のイメージを併せて伝えてあげるのもいいでしょう。
自分にも駄目出しをしがちなので、上記は自分自身に対しても言えます。欠点を克服しようとするのは大事なことではあるけれど、時にそれは効果的なことではないかもしれません。
世の中に完璧な人は存在しないし、存在し得ないのも事実です。あまり自分に完璧さを求めない緩さも必要で、今の自分を認める、あるいは今の自分を「許す」感覚です。「自分は求めすぎているな」と思うのであれば、この世の中に完璧な人などいないという単純な事実を思い出すといいと思います。
もう一つは、問題を探してしまうことです。問題を見つけること、解決することの両方に才能があり、それを実行することが無意識の喜びでもあるので、問題のない状態だと自分の才能を発揮できず、何とか問題を探し出そうとしてしまう可能性があります。
極論すると、他の人から見ると問題を作り出そうとしているようにすら見え、思考が後ろ向きだという印象を与えてしまうかもしれません。特に順位が対極に来やすい「回復志向」と「慎重さ」を併せ持つ人は、「最上志向」と「ポジティブ」を併せ持つ人にそういう印象を与えがちです。
本来は補い合う関係にあるべき両者ですが、無意識のレベルではすれ違いがちです。「回復志向」という才能を持っている以上、問題が見えてしまうことを止めることはできません。だから、その問題を具体的な解決に向けて指摘するのかどうかを、場面に応じて判断するのがコツです。
手段が目的化しないように、物事の全体を見渡し、今それが本当に必要なのかを自分に問いかける。プロジェクトを軌道に乗せて成果を出すことが本来の目的であるべきなのに、さほど重要ではない問題に意識を持っていかれがちなので、時に視座を高く持つことを意識してください。問題が明らかになって放置するのは心苦しいかもしれませんが、全体を考えてあえて手をつけないという判断も時には必要です。
そして、おせっかいになることです。他者の抱える問題にも首を突っ込みがちで、それで相手が喜んでくれる場面も多々あるので、それ自体が悪いわけではありません。ただ、人には自分の問題を自分で解決する力があり、その権利があります。人は様々な問題を抱えつつ、それを乗り越えることで成長していくものです。
相手のためを思うからこそ、自分が手を出すことを我慢して手放す。手を差し伸べるのか否かを、場面に応じて選び取る意識が大事です。何かと問題を抱えている人に「惹かれる」こともあるかもしれません。それが悪いわけではなく、そうなりがちな自分を自覚しておくことが大事です。
効果的に活かす方法
「回復志向」を効果的に活かす鍵は、本来あるべき姿を具体的に描くことと、自分の出番を見極めることです。
まず、本来あるべき姿を具体的にイメージすることです。それが具体的であればあるほど、現状とのギャップが明確になり、自分が何をなすべきかがはっきりしていきます。
回復させた先に何があるのかを、明確にイメージしましょう。対象が自分自身の場合は、最終的にどういうところを目指すのかを言語化し、明確にしておくといいと思います。ただし、あまりに大きな捉え方をしてしまうと大変なので、時間で区切るとか、少し小さな単位で考えた方がいいかもしれません。
次に、自分の出番を見極めることです。自分がどの分野に特に興味を持ちやすいか、どの種類の問題に取り組むときに最もやる気が高まるかを自覚することです。人間関係構築力が比較的上位なら人間関係の問題に意識が向きやすく、「調和性」が高ければチーム内の意見の対立を解消したくなり、「共感性」が高ければ周りの人が抱える問題に寄り添いたくなる。
実行力や戦略的思考力が強ければ、プロジェクトのトラブル対応や仕組みの改善に意欲が湧くでしょう。自分の得意分野を意識しながら、それを活かす適切な場面を選んでいく。「最上志向」を上位に持つ人のように問題点に目を向けづらい人もいるので、特に「最上志向」の多いチームや組織の中で、見逃せない問題が生じた際にそれを指摘し、皆の注意をその問題に向けさせる役割を担えます。
今は表に出ていなくとも、いずれ取り返しのつかないことになりかねない問題の芽を摘んでおく。そういう役割を担える人は、組織の中で貴重な存在です。「回復志向」を前面に出していくのか、あるいは抑えるのかのめりはりをつけ、必要なタイミングで介入することが大事です。
そして、自分の特性を周りに知っておいてもらうことです。自分は問題解決するのが得意だし、そういう意味で手助けをすることをいとわない。そう周りの人に伝えておくと、人の手助けを得ることにためらいがちな人も頼みやすくなります。そしていざ頼られたら、全力で自分の才能を発揮する。それは取りも直さず、自分自身を喜ばせることでもあります。
人の役に立ち、自分の喜びにもつながる。「分析思考」や「原点思考」を併せ持つ人は問題の根っこを押さえようとし、「慎重さ」を併せ持つ人は同じ問題が二度と起こらないようにという視点を加えて解決していきます。自分にそういう視点が欠けていると感じる場合は、そういう思考を持つ人の力を借りることを意識しましょう。
対比される資質
「最上志向」と「回復志向」は、統計的に順位が離れやすい資質です。「回復志向」を上位に持つ人は、問題のあるところ、できていないところ、不足のあるところに目を向け、それを本来の状態に戻します。マイナスをゼロに戻す思考で、本来あるべき状態に戻ったところが到達点です。
「最上志向」を上位に持つ人は、優れたものをさらに引き上げたいという欲求から、すでにできているところに目を向け、それをさらに良くしようとします。ゼロをプラスに、プラスをさらにプラスにする思考で、そこには到達点がありません。二つとも上位の人は必ず存在するので真逆というわけではなく、妥協なく改善を目指すところは共通しています。ただ、根本の動機づけが異なるのです。
この違いは、相互理解がないとすれ違いを生みます。「回復志向」から見れば「最上志向」は問題を見ていないように見え、「最上志向」から見れば「回復志向」は駄目なところばかり見ているように見える。しかし、物作りで言えば、製造の過程に問題があれば直ちに解決しなければなりませんし、できあがった製品も際限なく改善を続ける必要があります。
それぞれの視点がそれぞれに大事なもので、どちらも組織に欠かせません。思考の型の違いは役割の違いです。順位が離れやすい資質同士だからこそ、お互いを尊重し合い、お互いの役割を最大限果たせれば、どんなことでもより良いものになっていきます。
他の資質との組み合わせ
「回復志向」と「共感性」が組み合わさると、困っている人を放っておけない人になります。「共感性」には、人の気持ちを大切に扱い、人が笑顔でいることを自分の喜びにしたいという欲求があります。相手の心の痛みを取り除いてあげたいという気持ちになりやすいので、何か困りごとを抱えている人に寄り添い、その人が笑顔を取り戻す手伝いをします。
「回復志向」と「成長促進」が組み合わさると、できない人を辛抱強く見守る人になります。「成長促進」には、人の成長の兆しを見つけ、その成長を支えたいという欲求があります。できないことがあって当たり前という思考と結びつくので、放っておいてもできてしまう優秀な人よりは、むしろできないことがある人の方に惹かれ、できるようになるまで見守り、共に取り組みます。
「回復志向」と「分析思考」が組み合わさると、根本の原因を押さえて解決する人になります。「分析思考」には、なぜそうなるのかを知り、筋が通っていることを確かめたいという欲求があります。表面的な解決策で対応するのではなく、なぜその問題が起きたのかを突き止めた上で解決に導くので、同じ問題が繰り返されにくくなります。「原点思考」を併せ持つ場合も同様に、問題の根っこを押さえようとします。
「回復志向」と「適応性」が組み合わさると、緊急のトラブルに強い人になります。「適応性」には、今この瞬間に起こることを受け入れて対応したいという欲求があります。トラブルや問題はあるのが当たり前という感覚と共に、予期しなかった緊急事態にも過度に慌てることなく、場合によってはむしろわくわくしながら対処にあたります。
このように、「回復志向」は組み合わさる資質によって表れ方を変えていきます。ただ、根っこは一つです。本来あるべき状態に戻したい。この世から一切の問題が消えてなくなることなど絶対にありません。つまり、「回復志向」を上位に持つ人の出番がなくなることは絶対にありません。優先順位をつけながら、これからもどんどん問題を解決していってください。
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