ストレングスコーチの知識茂雄です。
人間関係構築力の資質である「成長促進」について解説していきます。
根源的な欲求、動機づけ
「成長促進」を上位に持つ人の根源にあるのは、人の可能性を信じ、その人が成長していくのを見たいという欲求です。
原語はDeveloper。開発者という意味合いですが、カタカナでディベロッパーと言うと開発業者のように聞こえるので、日本語の「成長促進」の方がイメージしやすいと思います。ゴリゴリ行く感じではなく、見守る目線です。
「成長促進」を上位に持つ人は、どんな人にも磨けば光る何かがあると信じて人と関わります。すべての人は、どんな状況にあっても常に成長の途上にある。だから、どんな人であってもその先にいくらでも伸びていける可能性がある。そう無条件に信じているのです。
そして、自分が関わることで人が成長していくのを見ることが、何よりの喜びになります。この欲求は他者に向かうものです。自分自身の成長にこの資質が働くわけではありません。人の可能性に目を向け、人を見守り、成長を促す。この「人が伸びていくのを見たい」という欲求こそが、「成長促進」という資質の核心です。
振る舞いの特徴
人の可能性を信じる欲求は、まず「小さな成長に気づいて言葉にする」という形で表れます。
「成長促進」を上位に持つ人は、他者の成長に関心があるので、無意識のうちに周囲の人を観察しています。だから、その人のほんの少しの進歩や成長にも目ざとく気づきます。そして「わあ、こんなこともできるようになったんだ」と言葉にして伝え、相手を勇気づけます。その言葉が、その人の成長をさらに後押しするのです。
今できないことがある人のことも、決して見限りません。常に人の可能性に目を向けているからです。何回やってもうまくいかず落ち込んでいる人には、「大丈夫。あなたならきっとできるよ」と繰り返し励まし続けます。「成長促進」を上位に持つ人にとって、失敗は成長の過程で当たり前に起こることの一つに過ぎません。だから失敗を否定したり非難したりせず、励まし、勇気づけ続けるのです。
成長には時間という投資が必要なことも知っています。だから、相手の成長を辛抱強く待てます。相手の可能性を信じ、成長に向けての投資を促し、相手の成長を疑わずに待つ。これもこの資質の特徴です。
こうした人は、自然と部下や後輩の面倒見がよくなります。「人を育てたい」「人の成長を支えたい」という自然な欲求から、教職の道に進む人も多いと思います。
強みとして活かせている状態
この欲求が強みとして機能しているとき、「成長促進」を上位に持つ人は、本人すら気づいていない可能性に目を向けさせ、その可能性を広げてくれる人になります。
人の可能性を信じて見限らないその姿勢が、周りの人が自分の才能に目を向け、それをじっくり育てることを可能にします。何度転んでも優しく手を差し伸べて引き起こしてくれる存在がいるから、周りの人は失敗を恐れず、自分の成長のために何度でも挑戦できるのです。傷ついた人にとっては、傷を癒やす場を与えてくれる母船のような存在でもあります。
その温かさは、必ずしも言葉になりません。あえて口にしなくても「大丈夫だよ」とそっと背中を支えてもらっている感覚。存在そのもので人の成長を支えている、そんな人です。
リーダーとしては、成果そのものよりも人の成長に目を向けられるところが強みになります。もちろん成果を出すことは大事ですが、それ以上に組織にとって大事なのは人の成長です。人が育てば、成果はあとからお釣りが来るくらいについてきます。どんな人にも可能性があると純粋に信じ、成長を待てる「成長促進」を上位に持つ人は、組織を育て上げるリーダーになれるのです。
妨げになってしまっている状態
同じ欲求が裏目に出ると、まず無駄に待ってしまいます。
強みは、相手の可能性を信じて辛抱強く待てるところです。それだけに、この裏返しが妨げになります。人それぞれに、どうしても向いていないことはあります。でも「成長促進」を上位に持つ人は、そういうときでもどうしても可能性の方を見てしまうのです。「頑張れば何とかなるんじゃないか」と、つい思ってしまう。
育成をあきらめきれず、必ずしもその人の得意ではないところを伸ばそうとして、時間を使いすぎてしまうこともあります。チームのリーダーを担っている場合は特に注意が要ります。その人の才能や強みが発揮できない役割を与えたまま、頑張らせ続けてしまうかもしれないからです。
「きっとできる」という思いが、励まされている本人にとって重荷になることもあります。自分の苦手なこと、嫌いなことを「きっとできる」と励まされ続けるのは、人によっては少ししんどいことです。
もう一つは、目を向ける相手が偏ることです。人の成長を目にすることが喜びなので、目が向きやすいのは伸びしろの大きな人、つまり今の時点で何かの能力が相対的に低い人です。逆に言えば、いわゆるハイパフォーマーには目が向きにくいかもしれません。
それ自体は全体の底上げになるので悪いことではないのですが、チーム全体で見るともったいない状況を作っていることがあります。採用面接を担当すると、誰を見ても「磨けば光りそう」に見えてしまい、選考が難しいというのもこの資質ならではです。
これらを防ぐには、まず自分にそういうところがあると自覚することです。その上で、本人と十分に話をして、そこで頑張り続けることを本人が望んでいるのかを確かめる。
「最上志向」や「個別化」を上位に持つ、人の強みを見抜くことに長けた人に助言を求めるのもいいと思います。その人がどの分野で輝くのかを一緒に考える。自分が面倒を見ている人が生き生きとして、ぐんぐん成長していく姿を見る方が、きっと大きな喜びにつながります。
効果的に活かす方法
「成長促進」を効果的に活かす鍵は、人を育てる役割を自ら買って出ることです。
この資質は、人の持つ可能性に光を当てる資質です。どんな人に対してもその人なりの可能性を見いだし、それが花開いていくのを支える。だから、単純に人を育てる役割を担うと、その才能を思う存分発揮できます。自分の仕事をできる限りその方向に寄せていく。簡単なことではないかもしれませんが、自分の得意なことと自分の喜びが一致するのは、いちばん幸せなことだと思うのです。
次に、人のほんの少しの進歩に気づく才能を活かし、それを言葉にして伝えることを意識することです。自分にとっては当たり前すぎて、なかなか才能とは気づきにくいところです。でも、人の成長に接すること自体が喜びである「成長促進」を上位に持つ人だからこそ気づけることなのだと、自覚を持ちましょう。
この視点は、すべてのリーダーにとって大切な視点でもあります。自分には当たり前に見えている人それぞれの可能性、当たり前にやっている言葉がけを、周りの人に伝えることで貢献できることもあります。
とはいえ、当たり前すぎて「教えてくれ」と言われても出てこないかもしれません。そんなときは、どんな場面で何を感じ、どんな声掛けをしているのかを他の人から質問してもらう。自分の振る舞いのうち他の人にはないものはどこかを聞いてみる。自分にとっての当たり前こそが才能であり強みなのです。
最後に、どの人をどんな方向に何を目標に育てるのかを、物事を広く見渡しながら考えることです。すでに成果を出している人の力をさらに伸ばすのか。力はあるのに発揮しきれていない人が殻を破るのを支えるのか。人を育てることを通してどう成果につなげるのかを考えると、この才能をいちばん効果的なところに使えます。
対比される資質
「最上志向」と「成長促進」は、どちらも人を伸ばす資質ですが、目を向ける先が対照的です。「最上志向」を上位に持つ人は、優れたものをさらに引き上げたいという欲求から、その人の強みや得意なところに目を向け、そこをさらに伸ばそうとします。「成長促進」を上位に持つ人は、人の可能性を信じて成長を見たいという欲求から、伸びしろの大きな人、今はまだできていないところに目が向きます。
この違いは、相互理解がないとすれ違いを生みます。「最上志向」から見れば「成長促進」は、伸びない人に時間をかけすぎているように見え、「成長促進」から見れば「最上志向」は、できる人ばかり見ているように見える。しかし、光るところをさらに磨く人と、まだ光っていない人の可能性を信じて待つ人は、どちらも組織に欠かせません。両方が揃って、組織は全体で育っていけるのです。
他の資質との組み合わせ
「成長促進」と「個別化」が組み合わさると、一人ひとりの個性を尊重しながら成長させる人になります。「個別化」には、人それぞれの違いを見抜き、それぞれに合った関わり方をしたいという欲求があります。だから、その人に合った伸ばし方で成長を支えられるのです。こういう人が先生だと、才能を自然に活かせるでしょう。
「成長促進」と「公平性」が組み合わさると、皆に公平に成長の機会を与える人になります。「公平性」には、誰に対しても同じ基準で接したいという欲求があります。特定の人だけでなく、全員の成長に目を配れる組み合わせです。
「成長促進」と「共感性」が組み合わさると、相手の成長の喜びを自分のことのように喜べる人になります。「共感性」には、相手の気持ちを自分のことのように感じ取る働きがあります。支えている人が自分の成長を喜んでいる姿を見て、一緒に喜べるのです。
「成長促進」と「回復志向」が組み合わさると、その人の今できていないところができるようになるのを支える人になります。「回復志向」には、本来あるべき状態に戻したいという欲求があります。だから、つまずいているところに目を向け、そこが直っていく過程を粘り強く支えられるのです。
このように、「成長促進」は組み合わさる資質によって表れ方を変えていきます。ただ、根っこは一つです。人の可能性を信じ、伸びていくのを見たい。その欲求が、周りの人に、自分の可能性を信じて安心して前に進む勇気を与えているのです。
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