ストレングスコーチの知識茂雄です。
戦略的思考力の資質である「原点思考」について解説していきます。
根源的な欲求、動機づけ
「原点思考」を上位に持つ人の根源にあるのは、物事の成り立ちや経緯を知ることで、今を本質的に理解したいという欲求です。
原語はContext。直訳すると文脈、背景、事情といった意味で、状況や環境という意味合いもあります。「原点」という意味では、物事の成り立ちの原点を探るというニュアンスです。
今目の前にあるものすべてに、過去の積み重ねがあります。その経緯をたどることで、「原点思考」を上位に持つ人は今を理解するのです。だから、思考は自然と過去に向かいます。
「原点思考」を上位に持つ人にとっては、「今」は常に「過去」と共にあるという感覚です。過去と今は切っても切り離せないものとして存在していて、過去に経験したことすべてが自分の経験値として確実に蓄積されている。だから、これから先に対する答えを「今ここ」に既に持っている、という感覚があります。この「過去を知ることで今を理解したい」という欲求こそが、「原点思考」という資質の核心です。
振る舞いの特徴
過去を知りたい欲求は、まず「そもそも」という口ぐせに表れます。
「原点思考」を上位に持つ人は、仕事を頼まれたとき、そもそもの経緯を知りたくなります。それが必要になった経緯や背景を知ることで、自分が何をなすべきなのかを本質的に理解しようとするのです。
だから、この資質を上位に持つ人に何かをお願いするときは、なぜそれが必要になったのかの背景、理由、事情をできるだけ説明してあげてください。納得して取り組んでくれます。「そもそも」を口ぐせにしている人は、この資質が上位である可能性が高いと思います。
人に対しても同じです。他人のことを理解しようとしたら、その人のこれまでの学歴、経歴、職歴などを知りたくなります。それらを知ることで、今目の前にいるその人がどういう人であるかを理解しようとするのです。必然的に、歴史や史実に興味を持つ人も多くなります。
過去の出来事を記憶に留めておくことも得意です。「原点思考」が「レコーダー」とも称される理由です。出来事の一つひとつを断片として蓄えているのではなく、それぞれがつながりを持った流れとして留めています。だから、誰もが忘れてしまった物事の背景や経緯を「あの時にこういうことがあって、その結果こうなって、さらにそれによってこうなって」とたどりながら説明してくれます。
そして、初めてのことに取り組むときも、まず過去に同じような事例がなかったかを調べます。自分にとって初めてでも、他の誰かがきっと同じようなことをやっているはずだと考え、参考になるものを抽出して、それを土台にやり方を組み立てるのです。
強みとして活かせている状態
この欲求が強みとして機能しているとき、「原点思考」を上位に持つ人は、過去の資産を今に活かして成果を出す人になります。
何かの成果を出そうとするときの近づき方は、資質によって様々です。「慎重さ」を上位に持つ人は想定されるリスクに備えて着実に成果を出し、「戦略性」を上位に持つ人は「もしこうなったら」の思考でいくつもの道筋を考え、「目標志向」を上位に持つ人は目標を定めて計画を立てます。
そして「原点思考」を上位に持つ人は、過去の資産を活かして成果を出そうとします。既に実績のある信頼性の高いやり方を組み立てられるのです。チームが初めての挑戦にためらっているときに「過去にこういう事例があったみたいだよ」と情報を出せるのは、この資質ならではです。
うまくいかなかったこともその経緯を覚えているので、同じ失敗を繰り返すことが少ないのも強みです。
原点に引き戻す力もあります。チームが行き先を見失って迷走し始めたとき、「そもそも我々の当初の目的はどこにいってしまったの?」という問いかけで、本来向かうべき方向に修正できます。
「そもそも」という言葉は、辞書を引くと「最初」「発端」という意味です。まさに原点に引き戻す言葉なのです。「原点思考」を上位に持つ人は、定めた目的地を見失いません。
人に対しては、その人の原点を思い出させてあげられます。人の生い立ちに純粋に興味を持って話を聞く姿勢は、相手に「自分のことをすべて受け入れてもらえた」と感じさせます。そして、人が話してくれた困難を乗り越えた体験をよく覚えています。
だから、目の前の人がまさに困難に直面しているとき、「あなたは◯年前のあの苦しいときでも、弱音を吐きながらも決してあきらめずに乗り越えてきたよね」と、ただその事実を伝えられます。その言葉で、人は自分がそもそも持っている力に気づくのです。
困難を乗り越えるヒントはすべて自分の内にある。チームであれば、すべて自分たちが培ってきたものの中にある。つまり、今ここに既に持っている。そこに気づかせてくれる存在なのです。
妨げになってしまっている状態
同じ欲求が裏目に出ると、まず「そもそも」がわからないと前に進めなくなります。
経緯や背景が納得できないと、取り掛かれない感じが出てしまうのです。状況にもよりますが、速さを求められるときは、「そもそも」を追求したくなる気持ちを抑えてとりあえず取り掛かり、後追いで「そもそも」を追求していくこともあっていいかもしれません。
もう一つは、変化への抵抗感です。これまでの経緯をたどり、その延長上に今と未来を見ているので、これまでの流れの延長上にはない大きな変更に抵抗感が出てしまいます。やり方や手順が変わったとき、「これまでこのやり方が当たり前だったのに」と感じるのです。
もちろん、変わることが常に正しいわけではありません。しかし、世の中全体が前に進むために変化し続けることが求められている中で、変化への「抵抗者」と見なされてしまうことがあるかもしれません。
過去の枠組みの延長上にはない新しいものに素直に乗るのも、難しく感じることがあります。「昔は良かったなあ」と回顧し、新しいものを吸収する意欲に欠けているように周りから見られてしまうこともあるかもしれません。
大きな視点で歴史を振り返れば、社会に大きな進歩があったときには何らかの劇的な変化が起こっているという事実は、頭では理解できると思います。自分が変化に抵抗感が出やすいことを自覚した上で、今求められている変化にどんな意味があるのか、その文脈を意識的に考えてみると、必要な変化への抵抗感は薄まると思います。今この瞬間は過去とのつながりを見いだせなくても、長い時間の流れの中で振り返れば必ずつながりが見いだせるはずです。歴史とはそういう繰り返しだったはずですから。
また、過去が今を作っていると考えがちなだけに、過去の失敗が未来への挑戦にストップをかけることがあるかもしれません。それは他者にも向くことがあり、他者の過去の言動から「あいつはこういうやつだ」と決めつけがちになるかもしれません。人は時に何の脈絡もなく変わり得るものだし、変わってもいい存在です。過去に引きずられすぎることなく、今を見ていくことも時に大切です。
効果的に活かす方法
「原点思考」を効果的に活かす鍵は、既に無意識にやっていることを、より意識的にやることです。
「原点思考」を上位に持つ人にとって、これまでを知ることは、今を理解し、その先に未来を描くために必要なことです。物事の成り立ちや背景を知って理解することが、この先の行動を選びやすくします。だから、経緯を確認してから取り組むという自分のやり方を、迷わず貫いてください。求められていることの本質をつかめるからです。
そして、周りの人に自分の思考の特性を知っておいてもらうことです。「原点思考」は、診断を受けた人の中で、戦略的思考力の中でもっとも上位5つに入りにくい資質です。あなたにとって当たり前の「経緯を知りたい」は、周りにとっては当たり前ではありません。
何となくで動ける人は、自分がそうであるからこそ、説明を端折りがちです。「経緯を教えてほしい」と伝えておくと、お互いに楽になります。
次に、過去の資産を使える強みを、意識して貢献に向けることです。過去にうまくいった枠組みを今に当てはめて応用する。他の多くの人には意外とその視点がないので、「以前こういうやり方でうまくいったよ」という助言が効くことが多いのです。
そして、過去をよく覚えているという強みを、人を勇気づけることに使ってください。今うまくいかずに嘆いている人に「あなたは以前こういう状況でこんなふうに乗り越えてきたよね」と伝えられるのは、この資質を上位に持つ人だけです。
最後に、原点に引き戻す問いを、意識して投げかけることです。物事が進んでいく中で、今この瞬間に対応するあまり本来の目的を見失ってしまう人は少なくありません。そんなとき、「そもそもの目的って何だったっけ?」という一言が、皆が忘れかけていた原点に引き戻してくれるのです。
対比される資質
「適応性」と「原点思考」は、見ている時間が対照的です。「原点思考」を上位に持つ人は、今を過去からの連続性を持つものとしてとらえ、経緯を確かめてから動きます。「適応性」を上位に持つ人は、今この瞬間に起こることを受け入れて対応したいという欲求から、今この瞬間だけを見て、とりあえず取り掛かることができます。過去があっという間に流れていってしまう「適応性」と、過去が常に今と共にある「原点思考」は、時間の感じ方がまるで違うのです。
この違いは、相互理解がないとすれ違いを生みます。「適応性」から見れば「原点思考」は経緯にこだわって動き出しが遅いように見え、「原点思考」から見れば「適応性」は経緯も確かめずに何となくで動いているように見える。しかし、経緯を押さえて確実に進める人と、その場で柔軟に動ける人は、どちらも組織に欠かせません。
「未来志向」とも向きが逆です。「未来志向」を上位に持つ人は、過去や今との連続性なく未来を描けます。「原点思考」を上位に持つ人は、過去の積み重ねの延長線上にこそ確実な未来が描けると考えます。ただ、どちらも今を味わうことが少なくなりがちという点は似ています。
他の資質との組み合わせ
「原点思考」と「学習欲」が組み合わさると、歴史や成り立ちから学び続ける人になります。「学習欲」には、知らなかったことを知っている状態にしていく過程を楽しみたいという欲求があります。物事の経緯を知りたい欲求と重なるので、過去の事例や史実を学ぶこと自体が喜びになり、その蓄積が判断の土台になります。
「原点思考」と「分析思考」が組み合わさると、経緯を因果関係でたどる人になります。「分析思考」には、なぜそうなるのかを知り、筋が通っていることを確かめたいという欲求があります。「あの時こうなって、その結果こうなった」という流れを、原因と結果で筋道立てて説明できるので、その説明には説得力があります。
「原点思考」と「慎重さ」が組み合わさると、過去の失敗を確実に次に活かす人になります。「慎重さ」には、起こりうるリスクを先に見つけて備えたいという欲求があります。うまくいかなかった経緯を覚えている力と合わさるので、同じ失敗をくり返さない備えができるのです。
「原点思考」と「回復志向」が組み合わさると、問題の元をたどって直す人になります。「回復志向」には、本来あるべき状態に戻したいという欲求があります。今の問題がどういう経緯で生まれたのかをたどれるので、表面ではなく根っこから直せるのです。
このように、「原点思考」は組み合わさる資質によって表れ方を変えていきます。ただ、根っこは一つです。過去を知ることで、今を理解したい。「原点思考」を上位に持つ人にとって、過去は過ぎ去ったものではなく、常に今と共にあるものなのです。
無料レポート
ストレングスファインダー®を受けた方へ
その困りごとには、理由があります
ストレングスファインダー®の上位10の資質と、いま感じている困りごとを1つ選んでいただくと、なぜそうなるのかを資質の組み合わせで読み解き、上位資質で試せる対処を2つ書いた1枚を、メールでお届けします。
上記はギャラップに承認されたものではなく、ギャラップの認可も推薦も受けていません。クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)に関する意見、見解、解釈は、株式会社ハート・ラボ・ジャパン代表 知識茂雄だけの考えです。



