部下や同僚に言いにくいことを伝えようとして、いざ口を開くと頭が真っ白になる。余計な一言まで出てしまう。結局、何も言わずに終わってしまう。そんな経験はありませんか。
言葉が出てこないのは、話しながら組み立てようとするからです。気持ちが揺れている場面で、何をどの順番で言うかまで、その場で考えるのは、誰にとっても無理があります。うまく言える人は、組み立てを先に済ませているだけです。いちばんつまずきやすいのは、最初の「事実」を伝えるところです。
話す前に、どんな順番で組み立てればよいのか
順番を先に決めておくための型があります。アサーティブ・コミュニケーションで言われる「伝え方の4つのステップ」です。
- 事実を伝える
- 気持ちを伝える
- 提案(してほしいこと)を伝える
- 結果と、代わりの案を考えておく
この順番で整理すると、相手に届きやすい形になります。型は自分を縛るものではありません。順番が決まっているので、気持ちが揺れていても、次に言うことは決まっています。揺れている自分を支えるものだと思います。
毎回、全部をやる必要もありません。事実と解釈を分ける。それだけでも、会話は変わります。
いちばんつまずくのは、最初の「事実」
たとえば、趣味の仲間の集まりで考えてみます。自分が休んだ日に、次の行き先が決まっていた。それを伝えたいとき、「私抜きで、勝手に決めたよね」と言いたくなります。
でも「勝手に」は事実ではなく、こちらの解釈です。相手は「連絡がつかなかったから先に決めただけ」と思っているかもしれません。解釈から入ると、相手はまず訂正したくなります。「勝手にじゃないよ」と。話はそこで止まります。
事実は、こうです。「私が休んだ日に、他の皆で話して、次の行き先が決まっていた」。録画を再生したら、そのまま映っていることを描写しています。相手も「うん、そうだね」としか言えません。
職場でも同じです。たとえば、締切前日に、隣の課の担当者から依頼がまとめて来る場面です。事実は「先週は、締切の前日に3件の依頼をまとめていただきました」です。
まず、事実で合意する。気持ちもお願いも、この土台の上に乗ります。土台に解釈が入ると、気持ちを伝える前に言い合いが始まってしまうかもしれません。「ひどいことを言われた」も同じで、事実は「『あなたには関係ないでしょう』と言われた」です。ひどいかどうかは、こちらの解釈です。分けてから、口を開きます。
気持ち・提案・結果と代わりの案は、どう組み立てるのか
事実の次は、自分の気持ちです。先ほどの例なら、「間に合うか不安で、ほかの仕事を止めることになりました」。主語は「私」にして、あなたが悪い、ではなく、私はこう感じた、と伝えます。
その次が提案です。「もっと私のことも考えてよ」では、相手は何をすればいいのか分かりません。「次からは、分かった時点で1件ずつ早めにいただけますか」なら、相手は明日から動けます。行動1つに絞って言葉にします。
最後の4つ目は、受け入れてもらえなかったときのことです。順番どおりに丁寧に伝えても、相手が受け入れてくれるとは限りません。「これだけちゃんと伝えたのに」と思うと、また怒りに戻ります。受け入れるかどうかは、相手が決めることです。自分にできるのは、伝えるところまでです。
だから4つ目は、話す前に考えておきます。先ほどの例なら、「難しい場合は、優先順位を一緒に決めさせてください」という代わりの案を用意しておきます。両方持って話す人は、断られても崩れにくくなります。
明日から、言いにくいことを伝える前にできること
誰かに何かを伝えたくなったら、口を開く前に、一度分けてみてください。いま伝えようとしていることは、事実だろうか、解釈だろうか。事実だけを口にする。それだけで、相手の返事が変わります。
ただ、型だけ覚えても、そこに乗せる中身が分かっていなければ使えません。自分の気持ちに気づくことと、自分が何を大切にしているかを知ることが先にあります。そのうえで、組み立てを前もって済ませておく。それが、その場で言葉に詰まらないための準備になります。
4つのステップを自分の実例で練習したいときは、アサーティブ・コミュニケーション研修があります。当日は、日ごろ伝えにくいと感じる場面を、事実から順に整理して、2〜3人でロールプレイをします。人数や時期が決まっていなくても、ご相談いただけます。
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