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正論を言ったのに部下に伝わらない理由と、言う前に気づくこと

部下から報告が上がってこなかった日に、「報告は期限までに出してください」と言った。正しいことを言ったはずなのに、部下の表情がかたくなり、その場の空気が変わってしまう。言ったあとも、なんとなくもやもやが残る。

部下に正論が伝わらないのは、正論の奥に、自分でも気づいていない本当の気持ちが隠れているからです。ここでいう正論は、誰が聞いても筋が通っていて、相手が反論できないように見える理屈のことです。その気持ちに気づくと、相手に伝えるかどうか、伝えるならどう伝えるかを、自分で選べるようになります。

部下に正論を言うと、なぜ心が離れるのか

正論は、相手のためを思って言っていても、裁く言葉として届きます。話している側に悪気はありません。それでも聞いている側は、どこか責められているような感覚を抱きます。

人は責められていると感じた瞬間に、心を閉じてしまいます。そこから先は、どんな言葉も届かなくなります。

「報告は期限までに出してください」と言った上司にも、本当は別の気持ちがあったはずです。たとえば、お客様に聞かれたときに答えられず、焦ったという気持ちです。伝えたかった気持ちが、正論のかたちに置き換わって出てしまうのです。

筋が通っているはずの正論が、簡単に崩れた話

職場の話ではありませんが、正論の奥に別の気持ちがあった話を、ある方から聞きました。

地域の活動で、その日は問い合わせ対応を任されていたそうです。途中で抜ける用事があり、残る人に「あとで◯◯さんから問い合わせが来るはずだから、こちらから折り返すと伝えておいて」と頼んで出かけました。戻ってみると、その人は「もう私の方で答えておいたから」と言いました。

その方は、それが引っかかりました。何が嫌だったのかを聞いていくと、こう答えました。「あれは私が引き受けた話だから、私が対応するのが筋です」

言っていることは、正しいはずです。それなのに、すっきりしない。

この正論には、弱いところがあります。「別に、誰が答えても同じ内容だったよ」と返されたら、終わりなのです。「私でないとダメだ」という理由は、根拠を失います。反論できないように見えた正論が、簡単にひっくり返ります。

正論の奥には、どんな気持ちがあるのか

簡単に崩れるのは、その正論が本心ではないからです。

この方が本当に引っかかったのは、「誰が対応するのが筋か」ではありませんでした。自分が頼んだことを、そのままやってもらえなかった。軽く扱われたように感じた。そこに寂しさがあったのです。

でも、それは言いにくいものです。「私の頼んだ通りにやってほしかった」と口にするのは、少し子どもっぽく感じます。だから、正しさで覆い隠します。やっかいなのは、覆い隠していることに、本人が気づいていないことです。

怒りやイライラは、二次感情と呼ばれます。いちばん外側にある感情です。その奥に、悲しさ、寂しさ、虚しさ、不安といった、もとの感情があります。これが一次感情です。

この方も、話しながら掘り下げていくうちに、奥にあるものが出てきました。自分の頼んだことをそのままやってもらえず、ないがしろにされたようで、悲しかった。「私が対応するのが筋です」という正論は、この悲しさにふたをするための言葉だったわけです。

気持ちに気づくと、何が変わるのか

私はその方に聞きました。「それを、相手に伝えますか」

その方は、こう答えました。「もういいです。自分の気持ちが自分で分かったので、これですっきりしました」

ここが大事なところです。本当の気持ちに気づくと、伝えるか伝えないかを、自分で選べるようになります。言えずに黙り込むのと、分かった上で「今回は言わない」と決めるのとは、別のものです。前者はもやもやが残り、後者は残りません。

気づいた結果、伝えると決めることもあります。そのときは、主語を「あなた」から「私」に変えてみます。「報告は期限までに出してください」を、「報告がなくて、お客様に聞かれたときに答えられず、焦ってしまった」にします。

主語を変えると、矢印は相手ではなく自分に向かいます。すると聞き手は、責められているのではなく、気持ちを話してくれていると感じやすくなります。そのとき相手は、こちらの話を聞こうとしてくれます。

部下に注意したくなったとき、まず自分に聞くこと

選ぶためには、自分が本当は何を感じていたのかが見えていなければなりません。そこが見えないうちは選べないので、とりあえず正論をぶつけて、後味の悪さだけが残ります。

今日から1つだけ試すとすれば、これです。部下の言動にもやもやしたとき、あるいは正論で説得したくなったとき、一度止まって、自分に聞いてみます。「私は今、どんなふうに扱われたと感じているんだろう」。

部下に伝えなくてかまいません。まず、自分が気づく。その場で難しければ、あとで落ち着いてからでかまいません。振り返るだけで、気持ちは少し収まってきます。

アサーティブの4つのキーワードの1つに、自己責任があります。伝えるか、伝えないかは自分の責任で決める、という考え方です。気づいたあとにどうするかは、自分で決めてよいのです。

とはいえ、とっさのときほど、慣れた正論のほうが先に出てきます。気持ちを事実と切り分け、相手に届く順番で伝える練習は、自分の実例で重ねていくものです。アサーティブ・コミュニケーション研修では、伝え方の4つのステップ(事実・気持ち・提案・結果と代わりの案)を、自分の実例で練習します。人数や時期が決まっていなくても、相談できます。

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上記はギャラップに承認されたものではなく、ギャラップの認可も推薦も受けていません。クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)に関する意見、見解、解釈は、株式会社ハート・ラボ・ジャパン代表 知識茂雄だけの考えです。

この記事を書いた人

知識茂雄

知識 茂雄ちしき しげお

株式会社ハート・ラボ・ジャパン 代表取締役

1986年に九州日本電気株式会社に入社し、半導体技術者として品質向上の業務に従事。2011年に人事総務部へ移り、社内教育・研修の企画と運営、コーチング研修・アサーション研修の社内講師を担当しました。2013年にギャラップ認定ストレングスコーチの認定を受け、株式会社ハート・ラボ・ジャパンを設立。13年・延べ5,000名超のプロファイリングを行い、コーチングを続けてきました。

ギャラップ認定ストレングスコーチ/国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ/日本プロフェッショナル講師協会認定講師

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