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他者を尊重する前に、自分を尊重する

他者を尊重する前に、自分を尊重する | 株式会社ハート・ラボ・ジャパン

先日の研修で改めて強調したこと

先日、二日間にわたり、ストレングスファインダー®を活用したリーダーシップ研修を行いました。

そこで改めて強調してお伝えしたのが、このツールを使う上で最も警戒すべきは「資質で相手をステレオタイプに決めつけない」ことと、「相手の資質をネガティブに捉え過ぎない」ことです。

以前の研修で、ある参加者の方がこんなことを口にされたことがあります。

「うちの部下は『慎重さ』が上位にあるから、いつも決断が遅いんですよね」

この一言には、二つの問題が潜んでいます。一つは「慎重さ=決断が遅い」という決めつけ。もう一つは、「慎重さ」という才能を否定的に捉えているという点です。

決めつけとネガティブな解釈の危険性

「あの人は〇〇の資質だからこうだ」という決めつけは、相手への尊重とは真逆の行為です。

たとえば、会議で同僚が「この案件、もう少し検討期間が必要だと思います」と言った時、「ああ、この人は『慎重さ』が高いから、いつも時間がかかるんだよな」と思ったとします。

この瞬間、あなたは目の前にいる生身の人間ではなく、「慎重さ」というラベルを見ているのです。その人が今回の案件で慎重になっているのには、過去の失敗経験があるかもしれません。あるいは、他のメンバーが気づいていない重大なリスクを見抜いているのかもしれません。

さらに深刻なのは、才能をネガティブに解釈してしまうことです。「慎重さ」は本来、リスクを事前に察知し、問題を未然に防ぐ力です。しかし、自分と価値観が異なると、その才能が「足を引っ張るもの」に見えてしまうのです。

スピードを重視する人にとって、慎重に検討する人は「遅い」と映る。深く考えることを大切にする人にとって、すぐ行動する人は「浅い」と映る。これらはどれも「違い」であって、優劣ではありません。

診断結果は仮説、活用法は関わり方を探ること

確かに診断結果の精度は高いですが、そこから読み解けるのは「仮説」に過ぎません。

その仮説を手がかりに、相手が心地よく強みを発揮できる関わり方を探っていく。それが本来の活用法です。

たとえば「責任感」を持つ人には、期限と責任範囲を明確にして伝える。「原点思考」上位の人には、プロジェクトの経緯や文脈を共有する。「最上志向」を持つ人には「もっと良くするには」という視点で意見を求める。

これらはすべて「試してみる」ものです。うまくいくこともあれば、思ったような反応が得られないこともあります。それでいいのです。

リスペクトがあるかないかで変わる意味

相手へのリスペクトがあれば、こうした配慮は自然な「思いやり」になります。

しかし、リスペクトが欠けていると、相手の特性をただの「面倒なこと」として処理してしまったり、相手を「面倒な人」だと切り捨ててしまったりします。

「この人は〇〇だから、いちいち説明しなきゃいけない。面倒だな」。同じ行動でも、リスペクトの有無で意味は180度変わるのです。

すべては鏡写し:自己尊重から始まる

では、どうすれば相手を心からリスペクトできるのでしょうか。どうすれば、自分と違う価値観を持つ人を否定的に捉えずにいられるのでしょうか。

私が研修を行う際、常に根底に置いているスタンスがあります。それは「自分で自分をどう扱うかが、他者への扱いに投影される」ということです。

自分とは違う他人を尊重するためには、まず自分自身を理解し、受け入れ、尊重することが不可欠です。

自分の中に「自分はこれができない」「この部分がダメだ」という否定的な思いがあると、そのダメだと思っている部分と似た特性を持つ人に出会った時、無意識のうちにその人のことも否定的に見てしまいます。

反対に、自分の弱みや苦手なことを「それも自分の一部」として受け入れられている人は、他者の弱みや違いにも寛容になれます。

他の人よりできることもあれば、できないこともある。そんな等身大の自分を認め、許すことができて初めて、自分とは違う他人のことも認め、受け入れられるようになります。

すべては鏡写しです。まず自分自身を大切に扱い、尊重すること。

そこから、組織やチームの良質な人間関係は始まっていきます。

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