ストレングスコーチの知識茂雄です。
実行力の資質である「慎重さ」について解説していきます。
根源的な欲求、動機づけ
「慎重さ」を上位に持つ人の根源にあるのは、最初からうまくいかせたい、失敗なく着実に成果を出したいという欲求です。
原語はDeliberative。「審議する」「熟慮する」という意味合いです。「慎重さ」を上位に持つ人は文字通り急ぎすぎた言動を取らず、熟慮した上で慎重に振る舞います。その意味合いは、いかにリスクを避けるかにあります。特に自分にとって初めて経験することは、あらかじめ様々なリスクを検討し、それらにどう対処するかを熟慮します。
逆に言えば、すでにやったことのあることについてはさほどリスクを感じないので、「慎重さ」はさほど表には出てきません。ここも、この資質の特徴の一つです。
そして、なぜリスクを避けるかと言えば、「最初からうまくいかせたい」という欲求があるからです。ここで強調しておきたいのは、「慎重さ」は実行力の資質だということです。以前は思考系に分類されていましたし、思考系の側面もあります。ただ、その思考はあくまで「実行して成果を出すため」のものです。着実に成果を出す、その目的を達成するために慎重に準備をする。この順番なのです。
起こり得るリスクを挙げていき、できるだけ回避し、回避できないものにもきちんと備えをしてから取り掛かり、どんなことでも着実に成果を出していく。この「最初から失敗なく成果を出したい」という欲求こそが、「慎重さ」という資質の核心です。
振る舞いの特徴
失敗なく成果を出したい欲求は、まず「取り掛かる前にしっかり準備する」という形で表れます。
「慎重さ」を上位に持つ人は、特に初めて取り組むことに対して、それに取り組むにあたっての様々なリスクを検討し、あらかじめきちんと備えをしてから取り掛かります。たとえば「収集心」を併せ持つ人が初めての土地に旅行や出張に行く場合は、事前にその土地に関するあらゆる情報を集めます。到着時刻が遅くなりそうで食事の心配があるなら、宿泊地の周辺にコンビニがあるかをあらかじめ確認しておく。なければ、食事をどこでどう確保するかをあらかじめ検討しておく。
そんな風に働きます。そして、何事も抜けなく、漏れなく、ミスなくやることを大切にしています。提出書類があるときは、何度も見返して記入漏れがないか、誤字はないか、内容に誤りがないかを確認します。この精度の高さは、明確な強みです。
次に、「対人関係でも慎重」という形で表れます。特にあまり親しくない人に対しては、自分から積極的にプライベートを明かすようなことはしません。「慎重さ」を上位に持つ人にとって、自分のプライベートを明かすのは、それだけでリスクなのです。だから、時間を掛けて距離を近づけていくことを意識した方がいいです。
「親密性」を併せ持つとなおのことこの傾向が強く、逆に言えば、心を許してくれているということは、それだけ信頼しているということでもあります。「調和性」や「共感性」も上位にあると、対立を起こさないように、人を不愉快にさせないようにと、よく考えてから慎重に発言します。自分の発する言葉が他者に与える影響を考えるので、簡単には人を褒めません。それだけに、「慎重さ」を上位に持つ人の褒め言葉には真実味があり、重みがあります。
そして、意外に思われるかもしれませんが、「時に即断即決する」という形でも表れます。「慎重さ」は割と誤解されやすい資質で、何かと行動にブレーキの掛かる人というイメージが強くついているように思います。そういう部分があるのも事実ですが、何でもかんでもブレーキが掛かるわけではありません。慎重になっているのは、その先の見通しがまだはっきりしていないときに限られます。逆に言えば、見通しがはっきりしていればブレーキなど掛かりようがないのです。
よく出てくるのが、家のような高価な買い物で、気に入った物件があると即断即決で購入するという話です。ここだけをとらえると「慎重さ」のかけらもないように感じられるかもしれません。でも、そこに至るまでに何軒もモデルハウスを回って様々な要素を検討しています。返済のパターンもいろいろ試算して、「こういう条件が揃えば買いだ」というところまで準備ができているからこその即決なのです。
検討し尽くした上での決断なので、もはやそこに迷いなどあろうはずがありません。私は「慎重さ」を上位に持つ人のことを、一度決断したら迷わない、ぶれない人だと思っています。やらないと決めたらやらないことにも迷いがない。この「迷いのなさ」に着目すると、この資質の見方も変わるかもしれません。
強みとして活かせている状態
この欲求が強みとして機能しているとき、「慎重さ」を上位に持つ人は、大怪我をしない、させないことで、周りに安心感と信頼感を与える人になります。
高いリスク察知の力を活かし、抜け漏れなく、失敗なく、確実に成果を出す。その姿勢が、周りに安心感、信頼感を与えます。所属するプロジェクトが大きな落とし穴にはまることを防いでくれる存在です。「これはまずい」と感じたら、ためらわず指摘する。そして同時に、指摘したことに執着しない。自分にしかない視点を提供し、皆で検討することに価値があるのです。
特に初めてのことに対しては慎重に準備し、慎重に取り掛かるので、そのぶん時間は掛かります。でも、常に慎重に手順を確認しているだけに、熟練するとむしろ他の人よりも手際よくさばけるようになります。最初の遅れは、後で十分取り戻せるのです。そして、慎重に検討し尽くした上で「行く」と決断した場合、その先は早い。動き出す前に十分な検討と準備を終えているだけに、一旦動き出すと、あるいは動かないと決めると、もはや迷いがありません。
何事もうまく成果を出すためには、アクセルとブレーキの両方を持ち、適切に操ることが必要です。世の中にはそれぞれの役割を持った人がいて、だからこそチームとして協業する意味がある。「慎重さ」は、そのブレーキの才能です。「慎重さ」を極めていくと、ものすごいことができる。それを見せてくれる資質です。
妨げになってしまっている状態
同じ欲求が裏目に出ると、まず心配が先に立って、なかなか動き出せなくなります。
特にそれまで経験のないことに対する心理的な抵抗感が大きく、心配が先に立ってなかなか動き出せない。それ自体が自分の中での葛藤を生むかもしれませんし、周りから「もっと早く動いてほしい」と思われているかもしれません。前に進めない感が出てしまうのは、不安や懸念点が見えているのに、そこへの対処方法が見出せていないときです。さらに分解すると、心配する必要のないことまで心配してしまっている場合と、あまりに完璧に対処しようとしすぎている場合があります。
前者で言えば、「収集心」も上位だったりすると、情報過多で不安になってしまうことがあります。情報はあればあるほどいいはずですが、多すぎると検討しなければならない範囲が広がりすぎ、いろんなことが複雑に絡まって、かえって物事を複雑に見せてしまいます。そういう場合は、やみくもに情報を取りにいくのではなく、最低限何がわかっていれば大丈夫なのかを一旦検討する時間を取り、情報を絞り込むことです。
「未来志向」も上位だと、想定する未来が割と先の方になりがちで、先を見ようとすればするほど不確定な仮定に不確定な仮定を重ねることになり、不安がどんどん重なっていきかねません。ここは、意識的に直近の未来までを考え、一歩一歩進んでいく意識を持つといいと思います。一歩前に進めば、そのぶんその先の視界がよりはっきりしていくからです。
後者で言えば、「最上志向」「責任感」「回復志向」が共に上位にある場合です。無意識のうちに「絶対に失敗しないように」となりがちで、その結果、準備に時間を掛けすぎてしまう。無意識に起こることなので、対処として必要なのは「意識的に」何かをやることです。最低限何が起こることを防げればよしとできるのかを確認する。うまくいかないことすべてを駄目なことにするのではなく、程度問題かもしれないし、自分がうまくいかずとも誰かが補ってくれて問題ないのかもしれません。
リスクはあくまでリスクであって、現実ではないので、考え始めると際限なく考えてしまいがちです。「一週間以内に情報を集めて結論を出す」のように期限を設ける、信頼できる人に「この案についてどう思う?」と意見を聞いて違った視点を得る、といったことも効きます。自分が不安に感じていたことが、実は心配する必要のないことだったと気づけることもあります。
誤解のないように書いておくと、何でもかんでも早く進められるようになりましょうと言いたいわけではありません。じっくり検討して準備するからこそその先が早い、という良さもあるので、場面場面での選択が必要ということです。慎重すぎて機会を逃すのはもったいないので、時々思い切って「やってみないとわからないよね」とつぶやいて見切り発車してみることがあってもいいと思います。
違う人になる必要はなく、違う人のエッセンスを少しだけ取り込む意識でいるといい。それだけで人生の幅が広がります。
もう一つは、周りに「遅い」と決めつけられがちなことです。何となくですが、世の中的には早く動くことの方が価値があることのように言われがちです。その結果、動くための「準備」をしていることに対し、「遅い」と決めつけられがちなのです。本来は、とにかく早く行動を起こすことも、しっかり準備をした上で行動を起こすことも、どちらも同じように価値があるはずです。
ここを中立に見られるようになれば、自他共にもっとこの資質を尊重できると思っています。そのためにも、自分がなぜ準備に時間を要するのか、何を大切にしているからそうなるのかを、周りの人に伝えておくことです。
効果的に活かす方法
「慎重さ」を効果的に活かす鍵は、実行力の資質だと自覚することと、アクセル役と組むことです。
まず、「慎重さ」が実行力の資質であること、つまり成果を出すことに焦点を当てる資質であることを、自他共に認識しておくことです。ここを自覚できているかどうかで、ブレーキが掛かりがちな自分の受け入れ方が違ってきます。確実に成果を出すためにこそ、しっかりとリスクを検討するために思考する。これこそが強みなので、可能な限りその時間をしっかり確保することを意識しましょう。
そして、一旦自分が納得すれば迷いがなくなるという部分も自覚しておくと、より迷いなくリスクを検討し、準備することに時間を割けるようになります。ここぞというときには、十分な時間を取って検討することです。
次に、懸念事項を挙げる目的を周りに説明することです。物事に取り組む前に障害物を取り除こうとするその言動が、それを必要としない人には不要なブレーキを掛けられているように感じさせてしまうことがあります。懸念事項を挙げるのは、そこに対処することでその先、滑らかに物事を進ませ、着実に成果を出すことが目的だと、しっかり伝えることです。そこを理解してもらっておかないと、極論ですが、ただ物事を前に進める上での阻害要因を作っているだけの人と思われてしまうかもしれません。
誰だって「もっと考えておけばよかった」「もっと準備しておけばよかった」と思った瞬間はあるはずなので、「確かにそうだな」と思ってもらえる部分が必ずあります。指摘するときも、一方的に指摘するのではなく「この点についてはこういうリスクが考えられるけど、どう思う?」と相手に問いかけると、協力的な雰囲気を作れます。
そして、アクセル役と組むことです。「慎重さ」がブレーキの才能だとすれば、「活発性」のようにブレーキの掛からない資質を上位に持つ人とは最高のパートナーになり得ます。「活発性」を上位に持つ人の強みは「まずやってみる」ところにあるだけに、時々はまらなくていい落とし穴にはまってしまうことがあります。その人が向かおうとしている方向に大きな落とし穴が待っているときは、教えてあげましょう。早く動くことの意味は、高速で試行錯誤を繰り返すことにあります。
ただ、そこでの「うまくいかなさ」は、ある程度軽微なものでないと許容されません。取り返しのつかない大怪我をしては元も子もないのです。少なくとも「慎重さ」を上位に持つ人は、大怪我をしない、させないリスク管理に長けています。どんな場面で、誰に対して、どんな関わり方でその才能を活かすのか。そう考えてみると、効果的な活かし方が見えてきます。
対比される資質
「ポジティブ」と「慎重さ」は、統計的に順位が対極に位置しやすい資質です。「慎重さ」を上位に持つ人は、最初から失敗なく成果を出したいという欲求から、先に起こり得るリスクを検討し、備えてから動きます。「ポジティブ」を上位に持つ人は、物事の明るい面を見て人を元気づけたいという欲求から、あまり先のことを心配せず「ま、何とかなるだろう」と思えてしまいます。
意味合いとしてやや対極に位置するのが「活発性」で、うまくいこうがいくまいがまずやってみることを大切にしています。特に「ポジティブ」と「活発性」を併せ持つ人は、ほぼほぼ行動にブレーキが掛かりません。そういう人から見ると、「慎重さ」を上位に持つ人の言動がやや後ろ向きに思えたり、「遅い」と感じたりすることがあり得るのです。
この違いは、相互理解がないとすれ違いを生みます。どちらが良い悪いではなく、ただ思考が異なるだけです。だからこそ、お互いの思考の違いを理解し合い、すり合わせておくことが大事です。本来対極にある思考同士は、補い合って働かせることができます。
「慎重さ」を上位に持つ人が考えすぎて動けないときに、「活発性」を上位に持つ人が「やってみなけりゃわからないよ。ひとまずやってみよう。何かあったら手伝うから」と背中を押す。
「活発性」を上位に持つ人が準備不足のまま始めようとしているときに、「慎重さ」を上位に持つ人が「ちょっと待って、これはどうなってる?」と良い意味でブレーキを掛ける。その際、何を心配して動けないでいるのかを確認してあらかじめ解消してあげると、なおいいですね。相互理解は相互補完という考え方を生み、それまですれ違いやすかった者同士を最高のパートナーに変えてしまう可能性を秘めているのです。
他の資質との組み合わせ
「慎重さ」と「責任感」が組み合わさると、決して安請け合いしない、信頼性の高い人になります。「責任感」には、人との約束を果たして誠実でありたいという欲求があります。引き受けた以上は必ずやり切りたいので、引き受ける前にすべてのリスクを慎重に検討し、確実に成功に導く備えをします。決して安請け合いしないところが、信頼を得る要素になります。
「慎重さ」と「内省」が組み合わさると、非常に深く考えた上で判断する人になります。「内省」には、一人で考える時間を持ち、考えを深めたいという欲求があります。重要な決定を下す前に、自分の経験や知識を振り返って最善の選択肢を見つけ、十分納得いくまで考えたからには、その決断に迷いがなくなります。
「慎重さ」と「分析思考」が組み合わさると、事実に基づいた堅実な判断をする人になります。「分析思考」には、なぜそうなるのかを知り、筋が通っていることを確かめたいという欲求があります。起こり得るリスクを、感覚ではなく根拠をもって検討するので、最もリスクの少ない道を筋道立てて選べます。
「慎重さ」と「戦略性」が組み合わさると、選択肢を広げた上で、最もリスクの少ない道を選ぶ人になります。「戦略性」には、先を読んで最善の道筋を選びたいという欲求があります。「戦略性」が場合分けで多くの選択肢を考え、「慎重さ」がそれぞれのリスクを評価して最も安全で確実な方法を選ぶので、リスクを最小限に抑えつつ最も効果的な道を進めます。
このように、「慎重さ」は組み合わさる資質によって表れ方を変えていきます。ただ、根っこは一つです。最初からうまくいかせたい、失敗なく着実に成果を出したい。動けない資質ではなく、あくまで動く前提で、成果を出す前提で、しっかり準備をする。そうとらえるだけで、リスクを検討し準備することに迷いがなくなるかもしれません。
上記はギャラップに承認されたものではなく、ギャラップの認可も推薦も受けていません。クリフトンストレングス®(ストレングスファインダー®)に関する意見、見解、解釈は、株式会社ハート・ラボ・ジャパン代表 知識茂雄だけの考えです。
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