「みんないい人たちなのに、なぜかチームの空気が重い…」
「会議になると、お互い顔色を伺ってしまってシーンとする」
そんなこと、ありませんか?
先日実施したストレングスファインダーの研修で、この「モヤモヤ」の正体を探るために、ちょっと意地悪な実験(ワークショップ)をやってみました。
テーマは、「S市 100周年記念フェスティバル」の企画。
このワークを通して見えてきた、チームが「ただの集まり」から「本当の仲間」に変わる瞬間の物語をシェアさせてください。
みんなで挑んだ「実験ワーク」の内容
今回お願いしたのは、チーム全員で「予算内で最高のイベントを作り上げる」というミッションです。
【プロジェクト】
S市 市制施行100周年記念フェスティバル
【ミッション】
たった1日で来場者「1万人」を集め、市の魅力をPRせよ
【厳しいルール】
使える予算は1,000万円まで(1円でもオーバーしたら即失格)
手元には「買い物メニュー表」が配られます。
そこには「豪華な花火大会」「有名アイドル」「地元の学生ボランティア」など、魅力的な選択肢が並んでいますが、それぞれに「集客数」「コスト」「リスク」が設定されています。
「派手なことをすれば人は来るけど、お金が足りない…」
「安く済ませようとすると、誰も来てくれない…」
そんな悩ましい状況の中で、チームを3つの段階に分けて観察してみました。
- フェーズ1:役割を決めずに、まずはそのまま話し合う
- フェーズ2:自分の「強み」を生かせる役割を決めてから話し合う
- フェーズ3:最後に、市長からとんでもない無茶振りが飛んでくる!
フェーズ1:役割がないときの、あの「もどかしさ」
まずは、役割なしでスタート。すると、どのチームも不思議と同じような空気に包まれます。
- 「花火もアイドルも呼んじゃおうよ!」と勢いで盛り上がるけれど、誰も電卓を叩いていない…
- 「あれ、予算オーバーしてるな…」と気づいても、「せっかく盛り上がってるし、水を差したら悪いかな」と言い出せない…
- 結局、誰が決めるのかわからず、時間だけが過ぎていく…
みんな能力はあるんです。でも、「自分がどこでアクセルを踏んでいいのかわからない」という遠慮が、チームの足を止めてしまっていました。
フェーズ2:役割が決まると、まるで別人のように
ここで一旦ストップ。「次は、自分の資質(強み)を活かせそうな役割に就いてから再開してください」と伝えます。
用意したのは、プロデューサー、広報、調整役、事務局長などの5つのポジション。
すると、霧が晴れたようにみんなの顔つきが変わるんです。
例えば、もし【分析思考】や【慎重さ】を持っている方が、「リスクを見つけるのは得意だから」と『事務局長』に手を挙げたとしましょう。
さっきまでは遠慮して黙っていた彼が、自信を持ってこう切り出します。
これは「文句」ではありません。事務局長としての立派な「貢献」です。
「自分はこの強みで役に立っていいんだ」という許可が出ると、人はこんなにも生き生きと動き出すんですね。
フェーズ3:市長からの無茶振り!そこで起きたドラマ
そしてワーク終了直前、プロジェクターに「緊急速報」が映し出されます。
「すまん!市の計算ミスで予算が減っちゃった。1,000万円から『700万円』にカットするね。でも目標の1万人は絶対集めてね。足りない分は、みんなの知恵と汗でなんとかして!」
「ええーっ!?」と悲鳴が上がる会場。でも、役割がバチッとはまっているチームは、ここからが速かったんです。
ピンチになった瞬間、それぞれの強みが連鎖反応を起こし始めました。
1.プロデューサーの決断(戦略性×最上志向など)
「中途半端なものを作るくらいなら、思い切って変えよう!」
彼らは瞬時にパズルを組み替えます。
「お金のかかる外注はやめて、自分たちで運営しよう。浮いたお金でメインゲストだけは死守する!」
2.広報担当の熱量(活発性×コミュニケーションなど)
「人手が足りないなら、私がなんとかします!」
「現場で私がマイクを持ってボランティアの子たちを盛り上げますよ!広告費がないなら、駅前でビラ配りしてきます!」
市長の言う「知恵と汗」を、その行動力でカバーしに行きます。
3.調整役の優しさ(共感性×調和性など)
ピリピリしそうな空気の中で、彼らがチームをふんわりと包み込みます。
「ねえ、みんな大丈夫…? 顔色が真っ青だよ。急にこんなこと言われて、本当にショックだよね。痛いほどわかるよ。……でも、ここで私たちがギスギスして喧嘩になっちゃうのが、私は一番悲しいな。予算は減っても、チームの仲まで壊したくないよ」
「強み」で成果を出し、「協業」で心が通う
ワークを終えたとき、一番印象的だったのは、目標を達成した喜び以上に、チームの間に流れる「信頼感」でした。
今回のワークでみなさんに体感していただきたかった一番の目的は、「相互依存」です。
それは単なる助け合いではありません。「強みを活かし合い、弱みを補い合う」ことで、一人では絶対に到達できない成果を、効率的に生み出すことです。
「あの人が決断してくれるから、私はサポートに徹することができる」
こうして自分の背中を預けられる役割分担ができると、仕事は驚くほどスムーズに進みます。
そして、もう一つ大切な副産物がありました。
それは、一つの目的に向かって必死に協業することで、「お互いの心の距離がグッと近づく」ということです。
お互いの強みを頼りにして、困難を乗り越えた先にこそ、本物の信頼関係が芽生えます。
明日、あなたの隣にいる仲間を「強み」というレンズで見てみてください。
そして勇気を出して、その強みに頼ってみてください。
そこから、最強のチーム作りが始まります。
